2024年12月22日(日)

都市vs地方 

2023年1月30日

すでにある移住支援機能を持つ制度

 さらに、東京圏から地方への人口移動を促す効果を持つ政策はすでにいくつも行われている。その最大級のものは地方交付税であろう。自治体間の財源の不均衡を調整し、すべての自治体が一定の公共サービスを提供できるよう、国税として国が徴収し、一定の基準によって再配分する制度であり、2021(令和3)年度には約16兆円が交付された。

 地方交付税を交付されない自治体は少数で、近年は都道府県では東京都のみが不交付団体である(23区は東京都とあわせて一つの自治体とみなされており、不交付団体となっている)。また、埼玉県、千葉県、神奈川県も人口一人当たりの交付税額は全国でも非常に低くなっている。

 そのため、地方交付税は、地方に手厚く公共支出のための援助を行い、住民サービスを高めることで地方への人口移動を促す効果を持っている。実際、総務省の「地方税に関する参考計数資料」によると、20(令和2)年度の住民一人当たりの地方税収は、東京都が22万6000円で全国平均の14万5000円を大きく上回るが、住民一人当たり地方交付税を加えると、東京都は不交付団体なので22万6000円と変わらないのに対し、全国平均は21万5000円と、東京都に近い値になる。

 都道府県別にみると、住民一人当たり地方税収と地方交付税の合計が最も多いのは島根県の40万2000円、続いて鳥取県の37万円となっている。その後に、高知県、岩手県、徳島県と続く。

 東京都は多い方から数えて30番目で、千葉県、埼玉県、神奈川県は最も少ない3県である。これをみると、地方交付税は、すでに、大都市、特に東京圏から地方へと公共サービスの財源を移転し、地方への人口移動を促す性質を持っている。

ふるさと納税が起こす政策矛盾

 それに加え、近年ではふるさと納税の規模も拡大し、寄付金控除を簡単に受けられるワンストップ特例の導入によって大都市部を中心に地方税収の流出が深刻な水準に達している。ふるさと納税の効果については、納税意識を高めるとか、地方の税収増の努力を促すなどの正の側面もあるかもしれない。しかし、返礼品競争の過熱や、その調達費用、広告費用などを加味すると、限られたパイの奪い合いである以上、日本全国で見た場合には地方自治体全体に入る税収は減少せざるを得ない。

 ふるさと納税の控除額超過となった地方交付税の交付団体には、税収減少分の75%が補填される。しかし、そもそも地方交付税は、各地方自治体が適切な水準の行政サービスや公共施設維持に必要な額に基づいて交付されているはずである。それをふるさと納税の結果に結びつけ、税収減少分の100%ではなく75%を交付団体のみに補填するというのは、本来の交付税の趣旨から外れるのではなかろうか。

 さらに、もともと財源が不足していないとされていた不交付団体である東京23区から税収を流出させるという新たな問題を引き起こしてしまっている。少なくとも、このように導入した制度が新たな問題を引き起こすのは避けるべきで、そのために、まずはワンストップ特例を修正し、ふるさと納税の控除は国の所得税控除で行うべきである。

 こうした制度そのものの問題は、それはそれとして修正されるべきであるが、それに加えて、ふるさと納税が地方への財源移転、ひいては人口移動圧力を生じさせる点は別に考慮する必要がある。


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