2024年4月26日(金)

Wedge REPORT

2023年2月1日

 質問書には、小出氏の講演会及びそれを後援することの問題点をまとめた。その要点は、大きく4つ挙げられる。

1、 チラシの時点ですでに事実誤認を誘発させる内容が含まれている。氏のこれまでの活動も鑑みれば、講演も風評払拭とは相反する内容となる可能性が極めて高い。

2、 風評問題は深刻で、対策費用には予定も含め多額の公金が投入されてきた。一方で、行政や組織が敢えて風評に加担した場合の損害を誰が補填するのか。

3、 科学的事実と議論に決着は着き、「両論併記」「議論」が求められた時期はとうに過ぎている。

4、 そもそも、何故敢えて「後援」までする必要性があったのか。それによって何を得て何を失うのか。誰が責任を取るのか。

実際に得られた対応

 質問書に対する対応が最も早かったのは、福島テレビだった。問い合わせを出した翌日には講演会への後援を取り下げ、その旨を記した返答が回答期日に設定した1月13日午前中に著者宛の電子メールで送られてきた。

『林 智裕様

平素はお世話になっております。
いただいたご質問に返答申し上げます。
ご指摘をいただいた講演会「原発汚染水はなぜ流してはならないか」の後援について、
弊社は1月12日夜後援を取り下げました。
本講演会の後援は、社内で十分な議論や検討がないまま承認されたもので、
再度総合的に検討し、「多くの角度から論じなければならない事象について、特定の講演会等の後援は社としてふさわしくない」と判断しました。
重要なテーマを含む本講演会の後援に関して、十分な議論、検討がないまま後援承認が行われたことを重く受け止め、今後あらゆる後援の申請に対し、慎重に審査を進めて参ります。
弊社は、政府のALPS処理水海洋放出の方針について、事実に基づいた情報を丁寧に伝え続け、懸念される風評を生むことのないよう、日々の報道活動を続けて参ります。よろしくお願いいたします。

2023年1月13日
福島テレビ株式会社』

 一方、設定した回答期日までに対応したのは福島テレビのみであった。朝日新聞と東京新聞は、今もなお返答がない。

 三春町からは、1月17日(火)の夕方に返信が来た。内容は以下の通りだ。

『林 智裕 様

ご質問にお答えいたします。
ご質問の講演会の後援につきましては、『言論の自由』の場を提供する後援でありますのですので(※原文ママ)、ご理解を賜りますようお願いいたします。
なお、公の施設の使用につきましては、地方自治法に基づき、正当な理由(明らかに差し迫った危険の発生が具体的に予見される場合等)がない限り、許可することとしています。

三春町総務課・三春町教育委員会教育課』

 質問に対する具体的な回答は会場の使用に関した内容のみに留まり、『言論の自由』を強調していることがうかがえる。

 前述したように、こちらの質問の主旨は講演会の中止を求めたわけでは無い。あくまでも「後援の正当性を問うた」ものだ。

 そもそも「後援」とは何を意味するか。精選版 日本国語大辞典によれば、『背後から、物事がうまくいくようにたすけること。資金などを提供して援助すること。応援。援助。うしろだて。』とされている。たとえ金銭的な支援が無くとも、公的機関が「後援」に名義を出して権威を与えた以上、少なくとも中立的な立場とは言えまい。

 三春町が「言論の自由」を強調しているが、読者の皆さんはどう思うだろうか。


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