2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2023年2月1日

 多様な意見・議論があることが民主主義にとって重要であることは論を俟たない。住民が参画し、透明性を確保しながらさまざまな情報を精査する機会も当然確保されるべきである。

 しかしながら、公的な権力・権威・影響力をもった機関・組織が「特別扱い」して権威を与えることが許容されはじめれば、その前提、社会の信頼性自体が崩壊することは、歴史を見ても、世界の現状をみても、明らかと言える。これは、福島テレビが後援取り下げの理由とした「多くの角度から論じなければならない事象について、特定の講演会等の後援は社としてふさわしくない」との判断とも合致する。

 今回のケースでは、地方自治法に基づき会場の使用許可を与えた時点で「言論の自由」は充分に果たされている。にもかかわらず、国際的・科学的知見のみならず政府の風評対策にも真っ向から反した講演を、行政機関が敢えて後援することには必然性は無いのではないか。

 仮に三春町が主張する論理を是とするならば、今後たとえば「新型コロナウイルスなど存在しない」「ワクチンは人口を減らすための陰謀」などと主張する団体の講演会ですら後援「しなければ」、三春町は行政としての公平性を著しく欠くことになってしまう。

風評被害をさらに苦しめる言葉への責任は?

「福島の食べ物は安全だから子供達に食べさせようと。それが食育だということを言いながら、そういうことを今やろうとしています。」

「学校給食に放射能で汚れたものを出すなんてことも含めてそうです。大人達はそれを防がなければならない」──。

 実際に行われた小出裕章氏の講演では、このような発言も確認された。無論、福島で普通に暮らすこと、福島県産品を食べることで被曝による健康リスクが上昇するなどという事実は無い。しかし、三春町と三春町教育委員会、朝日新聞、東京新聞、ラジオ福島は、この講演会を後援した。それに対し、何ら責任を取ることも無いのだろう。

 福島の復興をこれまで応援・尽力してくださった方々、風評に苦しめられてきた当事者らに対し、著者は福島に暮らす一人の県民として恥ずかしさと情けなさ、申し訳無さを感じている。

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