2024年11月22日(金)

中島厚志が読み解く「激動の経済」

2013年6月28日

経済活力回復はハードとソフト両面で

 もちろん、日本人らしい謙虚さやマネーゲームを潔しとしない考え方などは大事にするに越したことはない。経済教育を通じて一層市場経済に向き合わないことにはグローバル経済の中で勝ち抜けないとしても、欧米と全く同じ経済バランスを身につける必要はなく、日本人らしい経済バランスは大事にしなければならない。

 しかし、リスクが分からずに避けているばかりでは先に進まず、「失われた10年」を繰り返しかねない。せめて、リスクが分かった上で避けるか避けないか判断できるようにならなくてはならない。日本人らしい感性は大事にしつつも、実践的な経済教育はこの点で大きな効果を発揮する。

 今回の成長戦略は、改めて日本経済の抱える課題を明らかにし、戦略的方向を明確に示すものとなった。同時に、成長戦略が成立するたびに認識されるのは、結局成長戦略が成就するかどうかは日本の国民自身に大胆な経済変革を行う覚悟と度胸があるかどうかにかかっているということだ。

 当然、この覚悟と度胸は単なる無鉄砲さであってはならず、しかるべき経済バランス感をわきまえた上での覚悟と度胸に他ならない。世界経済の動きに向き合い、取り込む経済マインドが日本の個人と企業に備わったとき、日本経済は間違いなく主要国並みに活性化する。道具としての成長戦略に経済マインドを研ぎ澄まさせる経済教育が合わさることが最強の成長戦略となり、経済変革を確実に成し遂げることになるからだ。


(注)成長戦略が具体化するこのタイミングで、筆者は経済教育が最強の成長戦略だとする本を出版した(「統計で読み解く 日本経済最強の成長戦略」、ディスカヴァー・トゥエンティワン社刊)。日本経済の長期低迷等の背景にあるグローバル経済と向き合っていない国民の経済マインドなどにご関心がある読者にはぜひ一読をお薦めしたい。


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