日本人に必要な経済教育
「失われた10年」と言われる厳しい経済低迷が続いてきた日本には、経済活性化を図る成長戦略が欠かせない。それは、日本経済に十分使いきれないまま残されているヒト、モノ、カネの資源を有効活用することだ。
しかし、それだけでは足りない。成長戦略や財政金融政策などは経済を支える枠組みではあっても、個人と企業が躍らなければ経済活性化が成就しないからだ。
ここで必要なのは国民と企業の経済マインドを活性化させることだ。欧米主要国なみにビジネスの積極性とリスク・リターンの意識を持つことができれば、日本の国民と企業に特有の内向き志向や縮み志向はなくなる。
米国をみると、中学校から金融教育でリスク・リターンやコスト・ベネフィットの関係を実践的な形で学んでいく(図表3)。たとえば、得られる利益がコストに見合うかが重視され、利益を得る裏には必ずリスクや負担があることが、「百万長者への道」といったシミュレーションなど具体的事例を通じて教えられる。
ここで大事なのは、米国の金融教育で教えることが株式投資や実践的な金儲けの手段といった表層的なものではない点だ。限られた資源を有効活用するには、追加コストでどれだけの追加利益が得られるかで決まることを、数字を当てはめながら体得させることにこそ注目しなければならない。
くわえて、消費者として、生産者として、投資家、預金者および一般市民として、この考え方を使って有効に経済選択することが推奨されることも注目点だ。計算は強いが損得勘定を教育現場で実践的に学んでいない日本人にこのような教育が導入されれば、鬼に金棒といえる。