2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年7月1日

 米中間の海上での危険行動削減の軍・軍間対話は進展しつつあるように見える、と述べています。

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 中国は、EEZ内では他国による軍事的調査活動は認められていない、という海洋法解釈をとっています。もし本当に中国が海洋法の解釈を変えたのであれば、これは、良いことです。海洋法上、EEZ内で軍が調査活動を行うことが合法ということになれば、中国のEEZ内でインぺッカブル号のような事件は起こらなくなります。

 しかし、このシンガポールでの中国軍人の発言から、中国が海洋法の解釈を変えたと決めつけるのは、いささか早計でしょう。米国が違法なことをやっているので、その仕返しとして、中国は違法と考えてはいるが、米国が合法と主張することをハワイやグアムでやり返した、と言っているに過ぎない可能性があります。中国はA2AD(地域否定、接近阻止)を重視しており、中国海軍の行動範囲の拡大はA2ADより優先順位が低いと考えられます。したがって、メドカーフの読みは、深読みし過ぎのように思われます。中国の今後の言動で結論が出る問題であり、あまり性急に決めつけるべきではありません。

 ただ、今回の中国軍人の発言をとらえて、EEZ内での軍の調査活動を違法とする中国の海洋法解釈を明確に変更するよう迫ることは、やってみる価値があるでしょう。中国から好ましい反応を得られる可能性は高くないでしょうが、少なくとも、中国の真意を知るのには役立つはずです。

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