手書きした文字や図は保存され、キーワードで呼び出したり、各ページをリンクさせたりする機能なども備える。ネット接続はWi−Fi(無線LAN)で行う。さらに、小学生にも使えるという自社製の簡易なプログラミング言語を内蔵、ゲーム制作を楽しめるなど仕掛けは多彩だ。
開発で企画全般を担当したのは、研究開発部門のプランナーを務める辻秀美(28歳)。入社以来、おもに「手書きアプリ」の開発に従事、大手メーカーのスマホやタブレット向けにも採用されてきた。社歴は浅いが、手書き分野のスペシャリストの道を歩んでおり、2012年春にスタートしたこの製品の開発を任された。
ソフトウェア企業のUEIがハードを含むタブレットの自社開発に乗り出したのは、ペンを使った手書き入力の進化の可能性に着目したからだ。つまり、パソコンやタブレットが普及したデジタル時代の今日でも、紙とペンは貴重な記録用具であり、メモ書きに使ったり、アイデアを文字や図形で書き留めたりと、これからもすたることはない。
今回の開発では、UEIがハードも手掛けることにしたが、実際は液晶や入力ペンなどのデバイスは外部調達なので、まずそこから始めた。これは意外と難航したものの、国内外を駆け巡っていた辻らが、香港の展示会で精細な表現力をもったペンを発掘した。「独自性のあるものができそう」と、期待が膨らんでいった。
難航した ソフトづくり
創業者で社長の清水亮は、このデバイスをもとに「手書き」と「プログラミング」ができること、というオーダーを辻ら開発陣に出した。
とはいってもその具体化は簡単ではなく、取っ掛かりがなかなか見えてこない。そこで、辻は考え方を単純化して開発の進め方を整理してみた。「手書きにフォーカスするのだから、紙とペンの機能に絞ってみよう」と考えたのだ。ソフトづくりは、そこが出発点となった。
起動した後にアイコンは出ず、真っ黒な、あるいは反転機能を使って真っ白な画面からスタートする仕組みも「まさに白紙の状態から文字を書いていただく」(辻)という状況を再現するためだ。カメラなどの起動命令も、手書き文字で行うことにこだわり、従来のタブレットにない持ち味を出した。一方で辻は、「紙にはできない便利機能」として、書きためた文書の検索やリンクなど、デジタルだからこそ可能な機能を付加していった。