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Wedge OPINION

2023年2月16日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

ジャーナリスト、元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

 岸田首相は今国会冒頭の施政方針演説で、「日米豪印なども活用し、アジア、欧州、大洋州を始めとするパートナー国との連携を深め、自由で開かれたインド太平洋を推進する」と強調し、自ら主導的な役割を果たすことへの意欲を表明した。

 時あたかも、ことしは主要7カ国(G7)の議長国であり、国連安全保障理事会の非常任理事国としての任期が始まった。新しい外交のアプローチを行うには絶好のタイミングだろう。

 しかし、ASEAN、島しょ国との連携は中国の台頭をけん制するうえで効果を期待できようが、思惑通りに事が運ぶか。懸念材料も少なくない。とくにASEAN各国は、中国との関係が冷えきってしまうことを強く警戒している。

 22年6月に就任したマルコス大統領は訪日に先立つ23年年明けに北京を訪問しているし、ベトナムのチョン書記長もやはり昨年10月に、恩讐を超えて訪中、中国との適度な距離感に腐心している。

 台湾の最大野党、中国国民党の夏立言副主席が2月10日、北京で中国の序列4位、王滬寧政治局常務委員と会談した。両氏は台湾独立反対で一致したというが、台湾の与党、民進党これに反発、内部の火種をもたらした。

先の読めない未完のシナリオ

 日本がアジア太平洋でのメインプレーヤーになることには、米国だけでなく、中国の強引な政治、軍事、経済的進出に脅威を感じている東南アジア各国からも歓迎されるかもしれない。しかし、そういう役割を担おうとするなら、多くの難問とも向き合っていかなければならない。

 防衛力の強化に乗り出したとはいえ、経済はじめ国力全体が衰退している現状でそれを実行する力があるか。今回、日本はフィリピンに6000億円の巨額支援を表明したが、経済力に頼る手法ではいすれ息切れが来るだろう。

 日本を待つ外交舞台のシナリオは先の展開が読めない。「未完」というべきだろう。

  
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