未来を見据えた墓地政策
厚労省の『衛生行政報告例』によれば、00年度で改葬は約6・6万件だったが、20年度には約11・7万件まで増えた。そのうち無縁墓の改葬も2096件から2718件と増加傾向にある。
東京都建設局の榊原元秋霊園担当課長によれば「管理料が納付されず、使用者が死亡して継承者がいなかったため、年間400件程度、お墓を更地化することもある」という。区内にある青山・谷中・染井霊園などでは、このようにして空いたスペースなどを活用することで、立体型の埋蔵施設や広場などの整備を進めている。より多くの人が使用できるようにすると同時に、地域住民にとっての憩いの場をつくるといった狙いもある。
未婚世帯が増え、子どもに負担をかけたくないなどといったことから、今後も、個人の墓を持たないという選択をする人が増えそうだ。
工学博士(東京工業大学)で〝お墓博士〟の異名を持つ横田睦・全日本墓園協会主任研究員は「お墓の問題は、地域ごとにグラデーションがあり、慎重に考える必要がある。11年の地方分権一括法で墓地の経営許可が都道府県から市に権限移譲されたが、人員が少ない小規模な自治体では対応に苦慮している実態もある。自治体が新たに霊園をつくろうとすれば財源も問題になる。個人でお墓を持つわけではないが、合葬墓もお墓の一つであり、お墓が欲しいというニーズ自体は減っていない。社会福祉政策として自治体はニーズの多様化に対応していく必要がある」と指摘する。
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「人が死ぬ話をするなんて、縁起でもない」はたして、本当にそうだろうか。死は日常だ。その時期は神仏のみぞ知るが、いつか必ず誰にでも訪れる。そして、超高齢化の先に待ち受けるのは“多死”という現実だ。日本社会の成熟とともに少子化や孤独化が広がり、葬儀・墓といった「家族」を基盤とするこれまでの葬送慣習も限界を迎えつつある。そのような時代の転換点で、“死”をタブー視せず、向き合い、共に生きる。その日常の先にこそ、新たな可能性が見えてくるはずだ。
「人が死ぬ話をするなんて、縁起でもない」はたして、本当にそうだろうか。死は日常だ。その時期は神仏のみぞ知るが、いつか必ず誰にでも訪れる。そして、超高齢化の先に待ち受けるのは“多死”という現実だ。日本社会の成熟とともに少子化や孤独化が広がり、葬儀・墓といった「家族」を基盤とするこれまでの葬送慣習も限界を迎えつつある。そのような時代の転換点で、“死”をタブー視せず、向き合い、共に生きる。その日常の先にこそ、新たな可能性が見えてくるはずだ。