全国の自治体で、合葬式墓地の建設が増えている。
明確な定義があるわけではないが、カロート(納骨室)に、他の人の遺骨と一緒に埋蔵されるというものだ。施設を建てるものもあれば、「樹木葬」などと呼ばれるように、樹木の下にカロートを設置するものもある。
墓地といえば、お寺など宗教法人が運営しているという印象もあるが、「墓地の永続性及び非営利性の確保の観点から、墓地経営主体は、市町村等の地方公共団体が原則」(厚生労働省『墓地経営・管理の指針等について』)とされている。適切な墓地行政を行うことは自治体の役割なのだ。
兵庫県相生市では、2022年7月に姫路・西播地域において、公営で初めて合葬式墓地の募集を開始した。市民の要望をきっかけに、アンケートを行ったところ、約4割の市民が、合葬墓が必要と答えたことから建設が決まった。相生市の合葬墓は2300のキャパシティーに対して、募集開始以降、約250の申し込みがあった。利用者は、お墓を承継する人がいない高齢者、「墓じまい」をして移ってきた人などが多いという。
さまざまな形のお墓時代を映し出す都立霊園
東京の西武新宿線・高田馬場駅から急行で30分弱の場所にある東京都立小平霊園は終戦直後の1948年に開園した。小平霊園の中を歩くと、時代によって変わるニーズの変遷が見えてくる。
最初は、おなじみの一般墓。一定の区画ごとに長方形の墓石が並ぶ。次は芝生型だ。芝生に墓石が置かれ、その下にカロートがつくられている。
平成に入ると壁型が登場した。石の壁が横一列に並び、その石に家名などを彫ったプレートをはめ込むといった形になっている。そして98年に墓石を使わない合葬墓が、2012年には樹林型合葬墓が開設された。
合葬墓が増える背景には、使用者の経済的負担が少ないという理由のほか、家族形態が変化しているという側面がある。一般墓であれば、継承者がお墓を管理する必要があるが、合葬墓であれば不要だ。小平霊園を管理する山口浩平所長によれば「合葬墓を使用したいという方の声で多いのは、『子どもがいない』『子どもはいるけれど、結婚していない』『娘しかいない』など、お墓の継承者がいないというものが多い」という。
小平霊園では、「21年度の生前申し込みの直接共同埋蔵(2体)」が、38の募集に対して1064の応募があり、倍率は28倍と最も高くなっている。ただし、合葬墓はコンクリート製で大規模なものになり、建設コストもかかる。
その代わりになると期待されるのが樹林型合葬墓だ。樹木の地下にコンクリート製のカロートをつくって、そこに遺骨を納めて土をかけるというもの。直接土に埋蔵する樹木型だと、1カ所ずつしか使用することができないので、樹林型のほうがより多くの遺骨を埋蔵することができる。