平時前提のドローン運用では国家防衛戦略も画餅に帰す
前出のヒラタ研究員は「電波は目に見えない上に匂いもないため、どこが障害になっているのか気づきにくい。海外では性能の高いドローンが次々に開発・運用されており、日本は完全に〝一人負け〟状態にある。たしかに、既存の電波との混信を避けるための一定の規制は必要だろう。だが、せめて防衛という任務を背負う自衛隊には、災害時や国防上の危機に瀕した場合に限り、電波法の適用を受けないこととする仕組みの構築が急務だ」と語気を強める。
電波法が制定されてから70年以上が経過した。当時の日本では、ラジオ局やテレビ局、トラック無線など、多くの新しい技術が勃興した。こうした中で総務省が旗振り役を担い、電波法を根拠にしながら適切に電波利用に関する交通整理をしてきた。その意味で、日本を通信立国として成長させてきたことに疑いの余地はない。だが、これらは「平時」における議論である。
日本は戦後80年近く平和を享受してきた。この前提が覆りかねない環境となった今、これまでと同様に「平時」を想定した法律の運用に拘泥していては新たな国家防衛戦略も画餅に帰す。だからこそ、電波利用やドローンの活用にあたっても、真の意味で関係省庁間の「縦割り」を取り払い、国を守るために「有事」を想定した議論と抜本的な改革に着手すべきだ。
その実行には、政治が強い覚悟を持ってコミットすることが欠かせない。それなしでは冒頭の一文に説得力は宿らず、空虚に響くだけだ。
防衛文書はこれまでも、ドローン関連では空文化することがしばしばあった。今回もその愚を繰り返せば、日本に来寇した勢力の展開するドローン戦によって敗戦しかねない。敵のドローンは電子戦で撃ち落とせず、味方のドローンは合法的には飛ばせない、もしくは著しく性能が劣化しているのだから当然である。国家防衛戦略の狙いを実現させる政治の本気度と責任が問われている。