2024年12月22日(日)

Wedge REPORT

2023年2月28日

自衛隊への配備が進むParrot社製ドローン「ANAFI」。このまま宝の持ち腐れになってしまうことは避けなければならない(FINNBARR WEBSTER/GETTYIMAGES)

 国民の命と平和な暮らし、そして、我が国の領土・領海・領空を断固として守り抜くーー。昨年末に改定された国家防衛戦略の冒頭の一文には、強い覚悟が滲む。

 同戦略には、昨年から続くロシア・ウクライナ戦争を踏まえた記述が並ぶ。その柱の一つが、ドローンをはじめとする無人アセットの活用である。有人装備と比べれば比較的安価な上、人的損耗を抑えられることが大きなメリットであり、早期の実現が望まれる。事実、防衛省は今後5年間で約1兆円のドローン投資を見込む。

 だが、〝ある壁〟に阻まれ、手放しで喜べるほど見通しは明るくない。

「現行法に則った運用しかできないのであれば、たとえ自衛隊が運用するドローンであっても〝鉄のガラクタ〟と化す可能性が高い」。電波法やドローンの運用に詳しい明治大学市民社会と科学技術政策研究所のヒラタトモヨシ研究員は眉をひそめる。〝ある壁〟として同氏が指摘する「現行法」とは、1950年に制定された総務省所管の「電波法」である。

自衛隊のドローンをも鉄屑に、電波法の規制とは?

 携帯電話、テレビ、電子レンジなど、日常的に使う製品から、天文学レーダー、船舶・航空機で使用する通信機器などの一般にはあまりなじみがないものに至るまで、電波を発するものは数多く存在する。

 一般的なドローンで比較すれば、米国や中国をはじめ、海外では2・4~5・8ギガヘルツ(GHz)帯の範囲で自由な運用が認められているのに対し、総務省が日本で割り当てた周波数帯は主に2・4GHzに限られ極めて狭い。全地球測位システム(GPS)やスマホ、Bluetooth製品やWi-Fiのほか、日本ではこの付近の周波数帯を使う製品が多く、電波が混雑した状態にある。

 この状態では、同一周波数あるいは隣接周波数の電波が混ざってしまい、正常な受信(視聴や聴取)が困難になる「混信」と呼ばれる現象が生じやすい。ドローンでいえば、制御不能となり墜落する可能性が高まるということになる。

 数多ある電波を発信する製品の中でも、ドローンは新しい技術を生かした後発製品のため、既存製品との間で電波の混信を避ける制度設計がなされている。総務省総合通信基盤局の担当者は「現在認めている範囲以上に電波が強まると、カーナビや自動料金収受システム(ETC)など、既存の高度道路交通システム(ITS)の通信に影響を及ぼす可能性がある。ドローンに割り当てている周波数帯は、もともと混雑した中で四苦八苦しながら設定した」と話す。

 だが、影響を及ぼす「可能性」の検証については、計算システムを使用した、「机上の」シミュレーションで行っているといい、実機を用いた実証実験の有無を尋ねると「影響を及ぼしてはいけない」「少なくともここ数年は行っていない」と歯切れの悪い回答に終始した。

 しかし、筆者が実機を飛ばした経験則としては、ドローンの側がスマホの電波の影響を受けていると感じることの方が多いのである。


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