呉に同行した台湾代表団には国家安全会議の顧秘書長が入っている。また、米国側より、シャーマン国務副長官やファイナー米大統領副補佐官(国家安全保障担当)が参加した。
WSJの本記事は米台関係がこのように急速に変貌を遂げつつある背景としてウクライナへのロシアの侵略があり、台湾をめぐっても同じようなことが起こるのではないかとの危惧の念が米国政府側にあるからだろうと述べている。
正式な外交関係がないからと言って、台湾の状況をただ傍観するだけでは、今後「台湾有事」が発生するのを抑止できなくなる恐れもあると米国側が判断したからというWSJの見方は決して間違ってはいないだろう。
台湾の世論では、有事の際に米国は果たして支援してくれるのだろうかという議論が引き続き行われている。呉外相の訪米は、米国としての本気度を示すものと受け取られることも折り込んだ米台間のアレンジメントであろう。
バイデン政権としては、もし将来台湾が武力攻撃の対象になれば、「台湾関係法」を持ち、台湾に武器を供与することにコミットしている米国としては、「一つの中国」政策につき「曖昧さ」を維持しつつも、台湾救援のために駆けつける構えを示したいところであろう。
日台関係の深化は急務
最近、日本においても「台湾有事」が発生した際に、日本としていかに対応するかが話題になることが多い。日本としては、安保関連法案に基づき、米国の台湾支援に対する後方支援を行うだけではなく、日ごろからハイレベルで、軍事面を含め、台湾の政策決定者との間で情報交換しあうような関係を築く必要がある。今回の呉外相の訪米はそのためのヒントとなろう。
台湾問題を「核心中の核心問題」と位置づけ「台湾統一」のためには武力を行使することも排除しないとする中国の猛反発は目に見えているが、中国の台湾への軍事侵攻の可能性を考慮すれば、今回の呉外相の米国訪問は、日本の台湾問題への取り組みにおいても重要な課題を提起するものである。