2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年3月20日

 消耗戦、長期戦になって、時はウクライナにとって味方ではなくなっているとの考え方が多くなっているが、プーチンがこの戦争に部分的であれ、勝利を収めることにならないようにすることが重要である。

 そのためには、グロスが言うようにウクライナ支援額を倍増あるいは3倍増する必要があるのかもしれない。武器支援の強化、迅速化も必要であろう。またロシアを追い詰めて核使用やNATO領攻撃のようなエスカレーションを起こさないように、これまでウクライナへの提供をやめてきたロシア領も攻撃しうる長距離兵器、特に地対地ミサイル「ATACMS」の供与や戦闘機の供与も考える必要があるかもしれない。

 ロシア領はほぼ安全という状況は戦争の長期化につながる。エスカレ―ションへの恐れからウクライナ戦争の非対称性を維持することが適切か否か、メリット、デメリットを今一度検討する必要があるのではないかと思われる。

プーチンの国内支配は盤石か?

 ロシアの継戦能力については、ロシアにとりグロスの評価よりも厳しいのではないか。ロシアは兵器生産、兵員動員の面で相当苦しくなっているのではないかと思われる。

 プーチンは来年の3月には大統領選挙を控えている。いま新たに50万人を動員するなどのことをやれば、ロシア国民はこういう戦争はやめてほしいと考える可能性が高い。選挙はインターネット投票を不正に操作して勝つことができるかも知れないが、国内は選挙不正のデモなどに見舞われる可能性がある。

 プーチンが絶対的権力を持ち、国民の多くが黙従するとの評価は、ロシア国内での世論を軽視しすぎのようにも思える。プーチンによるウクライナ戦争と「大祖国戦争(独ソ戦)」を同一視するプロパガンダは、SNSを多用している若者にはそれほど影響を与えていないとの説もある。

   
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