外食産業におけるSaaSとは?
「外食を救うのは誰か、は私にもまだはっきりと分かりませんが、1つ大事になりそうなのは、コストを抑えて業態を変えられるような仕組み、プラットホームづくりです」
そう聞くと、「居抜きのこと?」と思ってしまう。
「そうではなくて、ソフトの面、SaaS(Software as a Service)のようなものです。レストランのOSと言っても分かりやすいかもしれません。簡単な所で言えば、キャッシュレス決済やモバイルオーダーなどです。どんな業態であっても店を開くのに共通OSが整っていれば、店づくりの発射台を高くすることができるのです」
そうなって来ると、強いのはグーグル?
「単にグーグルマップなどからお店を探し、予約するということであれば、グーグルが強いかもしれません。しかし、贔屓のレストランと個人をつなぐようなアプリケーションということであれば、まだまだチャンスはあるのではないでしょうか。デリバリーやテイクアウトがなじんだ今、外食が食事を提供する場所はお店から解放されました。お客さんが食べたいとき、食べたい場所に寄り添えるためのデジタルツールが登場すれば、外食の可能性は広がります」
お気に入りのレストラン、デリバリー(中食)、内食と水平展開して、日々の食生活サポートしてくれるようなアプリがあれば、ぜひ使ってみたい。
本書では、すかいらーく創業者の横川竟氏のインタビューが掲載されている。「価値をつくることより、価格を安くする方が楽」という言葉は印象的だ。苦しくても、価値のあるものを追い求めていくことが大事。これは、外食産業に限った話ではない。
「私も外食産業を取材しながら、実は雑誌業界と似ているなと気づき始めました(笑)。産業全体が縮小し、過剰とも言えるほどのコンテンツがあふれ、生きていくのに不可欠という訳でもない。ただ、外食でも色々な新しい取り組みがはじまっています。兵庫県・淡路島で東京ドームほどの土地を取得して『外食の街』づくりを進めているバルニバービや、モバイルオーダーを導入して接客の進化を目指している塚田農場などです。多くの課題を抱える外食産業で見えた解決策は、他産業にも生かせるんじゃないかと考えています」
外食産業の話ではあるが、それだけに止まらない内容がある本書。ぜひ、読んでみていただきたい。