2024年7月16日(火)

Wedge REPORT

2013年7月17日

 政治活動において、実際に進めている政策を語ることのできる現職は、新人より有利な立場にある。「ジバン(後援会)、カンバン(知名度)、カバン(選挙資金)」という三バンをフル活用した議員ならなおさらだ。

 田中角栄元首相の秘書を務めた朝賀昭氏は、「田中のオヤジは地元からの陳情には、たとえ無理なお願いでも丁寧に対応した。それが次の選挙で評価されることをよく知っていたからだ」と振り返る。これができるレベルの現職は、政治活動も選挙運動も必要ない。

 朝賀氏は、選挙運動が細かく規制されていることについて、「建前では『選挙運動がエスカレートすると有権者にとって迷惑』、『買収の温床になる』というが、本音は自らの既得権益が脅かされるのが怖いだけ」と話す。

 典型的にその“本音”が現れているのが選挙運動期間の短縮ではないだろうか(表)。これは、新人が同じ土俵に立てる選挙運動の期間が短いほうが、現職にとって都合が良かったからと見ることができる。三バンもなく有権者への影響力を持たない新人には、せめて多様な情報発信の機会と手段を与えるべきではないか。韓国の憲法裁判所の判断(別記事参照)は参考になるだろう。

規制に頼るのをやめ自由な選挙運動を

 比較政治が専門の早稲田大学社会科学総合学術院の坪郷實教授は「選挙は有権者が政治に参加する手段の基本。しかし、日本の公選法は有権者を政治から遠ざけている」と指摘する。現在の公選法は、表向きの平等を重視するばかりで、坪郷教授が説く基本の議論が行われてこなかった。

 終戦により日本は民主化したが、選挙制度は戦前を引きずったままだ。国民を縛るのではなく、これまでみてきた米韓のように、自由な選挙運動を認めるべき時期を日本はとうに迎えている。ネット解禁だけで議論を終わらせず、日本が成熟した民主国家になるためにも、時代遅れの選挙規制を撤廃することが強く望まれる。

 

WEDGE6月号特集『ガラパゴス過ぎる「ネット選挙」』
◎瑣末な議論に終始した日本のネット解禁論争
◎「規制」より「自由」で民主主義を体現する米国 海野素央(明治大学教授)
◎不可思議な規制だらけ 戦前からの公職選挙法

[特集] どうすれば良くなる?日本の政治

◆WEDGE2013年6月号より

 

 

 

 

 

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