変更になるのは任意の表示だけ
「組み換えではない」との表示が目につきにくくなったのは、遺伝子組み換え食品に関する表示制度の一部が4月から変わる影響のせいである。
遺伝子組み換え食品の表示制度は2001年にスタートした。表示義務の対象は大豆やトウモロコシ、ナタネなど9農産物とそれを原料にした33加工食品群だ。
表示の方法は3つあり、組み換え原料を使った場合は「組み換えです」との表示を義務づける。組み換えかどうかが区別されていない場合は「遺伝子組み換え不分別」との表示を義務づける。ただし、組み換えではない原料を使った場合は表示義務を課さず、何も表示しない(無表示)か、組み換え原材料の意図しない混入率が5%以下なら、「組み換えではない」と任意で表示できるようにした。
4月から変更になるのは、「組み換えではない」と表示できる任意の表示の部分だけだ。なぜ任意の表示制度だけが変更になったかといえば、組み換え原料が最大で5%も含まれているのに「組み換えではない」との表示を認めているのは、表示の正確性を欠き、消費者に誤認を与えるのでは、という意見が消費者団体や一部事業者から強く出たからだ。
そこで、消費者庁は17年4月から1年間、有識者らで組織した「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」で議論を重ね、18年3月に結論をまとめた。その結果、「組み換えではない」と表示できる条件を、それまでの「5%以下の混入」から「不検出」に厳しくした。言い換えると、「組み換えではない」との表示が可能なのは、組み換え原料の混入がほぼゼロに近い場合だけに限るとしたわけだ。
これに対し、一部食品メーカーや生協からは「米国から、組み換えではない大豆やトウモロコシを分別して輸入しても、船やトラックの輸送途中で組み換え原料が少しは混じってしまう。混入率が5%以下になるよう管理した企業努力に相当する表示も認めてほしい」との要望が強く出た。
その結果、生まれた言葉が「分別生産流通管理済み」や「遺伝子組換え混入防止管理済」といった言葉だ。要するに、新しい任意表示制度では、組み換えではない原料を使った場合、組み換え原料の混入が限りなくゼロに近いものが「組み換えではない」(または非遺伝子組換え)と表示され、5%以下の混入の可能性のあるものが「分別生産流通管理済み」や「遺伝子組換え混入防止管理済」と表示されることになったわけだ。(知っていますか?遺伝子組換え表示制度 )
食品メーカーは法律違反を恐れ、慎重姿勢
冒頭で紹介したイオンの食品売り場の光景は、この任意表示の変更の影響を物語る。4月からも「組み換えではない」との表示は可能だが、それが激減した背景について、表示問題に詳しい消費生活コンサルタントの森田満樹さんは次のように解説する。
「もし納豆などに『組み換えではない』と表示していて、組み換え原料が少しでも検出されたら、食品事業者は食品表示法に基づく食品表示基準違反の可能性が出てきてしまう。本来、国産大豆を使った製品なら『組み換えではない』と表示してもよさそうに思うが、それでも流通管理の中で組み換え大豆が混じる恐れがあるため、「組み換えではない」と表示するには徹底した管理がいる。実際、国産大豆を使用しながら、分別生産流通管理済みと表示している製品が見られることから、食品メーカーは『組み換えではない』と表示するのに相当に慎重になっている」
森田さんが指摘するように、「組み換えではない」との表示は「不検出」に限るという厳しい条件が「組み換えではない」との表示を激減させたといえよう。