2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年4月6日

 しかし、この社説が説明していないのは、イラン側の思惑である。3月1日、米国のカール国防次官は「イランは12日間で核爆弾1個分の濃縮ウランを製造可能である」と警鐘を鳴らしており、イランの核武装に対する懸念が高まっているが、イスラエルではイランの核開発を阻止するためには核施設への空爆を辞さないと主張してきたネタニヤフ氏が首相に復帰している。

 だがイスラエルからイランの核施設まで千数百キロメートルの距離があり、空爆は技術的難易度が高い。更にイランの核施設を空爆するためにはイラクなど何カ国かのアラブ諸国の領空を通過する必要があり、これら諸国の黙認が必要だが、今回、イランがサウジと関係修復したことにより、サウジ領空を通過する事は困難になったと思われる。

 イランとしては、イスラエルの空爆をより難しくするメリットがあろう。最近、イランとアラブ首長国連邦(UAE)との関係修復が急速に進んでいるが、これも同じ趣旨であろう。

軍事力を展開できない中国の限界

 米国は中国の台頭に対抗するために米軍のアジア・太平洋方面への再配置を全世界的に進めている。その中で、今回の中国による仲介は、米国が去りつつあることで生じるペルシャ湾地域の「力の空白」に中国が入り込もうとしている様に見える。

 しかし、米国は依然として中東方面に4万人の米軍を展開しているが、現時点では中国にはペルシャ湾地域にこのような軍事力を展開する能力はないので、短期的には中国の影響力の増大には限界があろう。

 一つ気を付けないといけないのは、バイデン大統領とムハンマド・サウジ皇太子の緊張した関係であり、指導者の個人的な感情からサウジが、過度に中国に傾斜してしまう可能性は排除されない。

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