3月2日付の米ワシントン・ポスト紙の記事が、イランの核施設で83.7%の濃縮度のウラン粒子が検知されたこと、イランが核爆弾に必要な核燃料の製造に要する時間が短くなりつつあること、など事態が切迫しつつあることを報じている。主要点は次の通り。
イランにおいてほぼ兵器レベルにまで濃縮された少量のウランが検知されたことが米国とイランの関係の緊張を高めている。
83.7%に濃縮されたウラン粒子は、先月、国際原子力機関(IAEA)の査察官によるイランのフォルド核施設におけるサンプル採取の際に発見されたとIAEAの報告は明らかにしている。この濃度は核兵器に必要とされる濃縮度90%を僅かに下回るのみである。
イランは核兵器を目指していることを否定してきているが、多くの専門家は、核爆弾の取得を一旦決定すれば、速やかに取得し得るよう、イランは枢要な構成要素を整えようとしていると見ている。「イランの戦略はヘッジ、つまり、兵器化の一線を超えることなく、兵器のオプションを保全することにある」と指摘されている。
イラン核合意は3.75%以下の濃縮度のウランの備蓄を660ポンドに制限し、IAEAによる監視を課したが、その見返りに厳しい米国および国際的な制裁が解除された。しかし、トランプがこの合意から離脱し制裁を再び課した。
現在の備蓄の大半は濃縮度5%未満であるが、イランは60%の濃縮を行っていることを認めている。フォルド核施設で濃縮度83.7%の異常なサンプルが発見されると、IAEAは直ちにテヘランに通告し、説明を求めた。IAEAは、問題解明のためのイランとの協議を継続中であるとしている。
コーリン・カール米国防次官は2月28日の下院における証言で、米国が核合意から離脱して以降、「イランの核の進歩には顕著なものがある。かつては一個の爆弾に必要な核物質を作るのに12カ月を要したが、今や12日である」と述べた。
ウイリアム・バーンズ米中央情報局(CIA)長官は、2月26日のテレビ番組で、濃縮計画の急速なエスカレーションにもかかわらず、2003年に閉鎖した兵器化計画を再開させる「決定をイランが行ったという証拠は有していない」と述べた。また、彼は「一旦核兵器を開発した場合、それを運搬するイランの能力もまた進歩してきている」と指摘してイランの弾道ミサイル計画に懸念を表明した。
バイデン大統領はイランが核兵器を取得することを許さない、それを阻止するための「全てのオプション」はテーブルの上にあると繰り返し述べている。核合意の復活についてバイデン政権が始めた協議は目下テーブルの上にない。しかし、バイデン政権はイランとの対立を解決する最善の方法は外交であると依然主張している。
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3月1日に加盟国に配布されたイランに関する最新のIAEA報告は1月28日にIAEAの査察官がフォルドの濃縮プラントにおいて濃縮度83.7%のウラン粒子を検知したことを報告している。
これはフォルドにおいて2系列の遠心分離機がIAEAに無通告のまま連結されたこと(無通告だったことはイランの保障措置協定違反である)をIAEAの査察官が探知した翌日のサンプル採取で発覚したものの由であり、このことが、イランはIAEAに察知されない形で迅速に核爆弾に必要な核燃料を取得する隠密の実験を行っているのではないかとの懸念を惹起した模様である。