2024年12月3日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年3月3日

Alireza Akhlaghi/Gettyimages

 米ジョンズ・ホプキンス大学のヴァリ・ナスル教授が、米国の外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」ウェブサイトに2月6日付で掲載された論説‘Iran’s Hard-Liners Are Winning’で、反政府デモを鎮圧したイランの保守強硬派は強硬さを増しており、西側は核問題のみならずウクライナ問題へのイランの関与等、重要課題を包括的に交渉するべきであると論じている。主要点は以下の通り。

・過去5カ月の反政府デモにおいて、イスラム革命体制が倒れるとの観測が広まったが、治安部隊による苛烈な弾圧、反政府デモ側の指導者と組織力の欠如から革命体制が主導権を取り戻している。反政府デモを通じて保守強硬派は過去にないほど強硬となっている。

・反政府デモは、2015年のイラン核合意の再開の見込みをおぼつかないものにした。

・イラン側の核合意に反する行動は国際原子力機関(IAEA)を警戒させている。最近、IAEAの事務局長は、イランは数個分の核爆弾に相当する濃縮ウランを備蓄しているとして、イランを非難し国連制裁を再開する可能性について安保理に報告する見込みだ。イラン側は、そのような場合、核拡散防止条約(NPT)から脱退し、核兵器保有宣言をすると脅かしている。

・イランは国際的な孤立の深まりに比例してロシアに接近、最新鋭のドローンを供与している。ロシア側にとってもイラン製武器が必要な限りイランとの関係が戦略的な支えとなっている。

・ロシアは新型の戦闘機や防空システムのような重要な武器をイランに渡すであろう。西側はロシアとイランという個々の脅威に加えて両国の共同の脅威にどう対応するかという問題を抱えることになる。

・米国とその同盟諸国は、少なくともイランの強硬姿勢を和らげる戦略を考えるべきだ。そのような戦略は、ロシアのウクライナ侵攻へのイランの関与とイランの核開発を含む最も緊急な課題についての対話と圧力及びペナルティーの組み合わせである必要があろう。欧米は、中断している核合意再開交渉のみならずウクライナ問題や地域問題を含んだより広汎な外交努力を開始するべきである。さもなければ、イランの保守強硬派は、イランをより危険な方向に向かわせるだろう。

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 5カ月間続いた反体制デモは、やはり、イランの保守強硬派の勝利で終わったようだ。欧米の識者の関心も反政府デモの鎮圧を通じて保守強硬派がより強硬になり、反政府デモとイランのロシア支援に絡んで欧米諸国が追加制裁を行ったのに対してイラン側が強く反発したことから、保守強硬派が西側にも一層強硬になるではないかという点に移っている模様である。


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