2024年5月3日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年4月21日

 フォンデアライエンは、「中国の考えと行動」を問題視する。何とか中国の世界観と振る舞いをもう少し変えねばならない。必要なのは、まず中国の協調的な振る舞いと世界観である。しかし、それは共産党支配とイデオロギーに突き当たる。それでも世界は、競争と協力でうまく管理していかねばならない。

 問題は、国家権力と結びついた経済、西側から合法、非合法で入手する技術の軍事力転用、増大した軍事力による高圧外交などである。西側の善意を利用して発展してきた中国は、今や独善的な大国化の道を歩んでいる。

 EUの対中ディリスキング政策は、外交術としては巧妙だ。米国のデカップリング政策とは違うものだと中国に言い得る余地を残している。既に中国のEU大使は、講演は一貫性がないと言いつつも、この政策は評価している。

米国と日欧の分離を図る中国

 林外相が3月1~2日に訪中した。秦剛(外相)、李強(首相)、王毅(国務委員)と会談した。秦剛とは会食を含めて4時間会談した。異例な厚い対応のように見える。中国は辛抱強かったようにも見える。対話、関与は良いことだ。「それなりの『厚遇』」の理由につき、日本経済新聞の中沢克二編集委員は、中国経済の不振にあるとする。確かにそうだろう。

 しかし中国には、もうひとつ重要な意図があるのではないか。中国は、日欧を米国から引き離し、米国を孤立させる戦略に出ているのかもしれない。ドイツのショルツ首相、スペインのサンチェス首相、林外相の後、フランスのマクロン大統領とフォンンデアライエンも訪中した。しかしバイデン大統領が求めている会談はその後も動いていない。

 今、中国は日米欧の連携を最も厄介に思っている。3月2日、王毅は、林外相に「日本の一部の勢力が米国の誤った対中政策にわざと追随している」と述べた。日欧は、分断されないように対米関係を強固にすると共に、対中対話を進めていくべきだ。日欧の対中レバレッジは今増えているかもしれない。

   
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