2月2日付の英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)で、同紙上級貿易ライターのアラン・ビティが、欧州連合(EU)は対中貿易のリスク削減に苦労し、未だそのために必要な政策手段や戦略を欠いていると述べている。
中国経済からのリスク削減(デリスク)をせよ、しかし切り離し(デカップル)はするな。これが、フォンデアライエンEU委員長がダボス会議で述べたことだった。EU加盟国が反中姿勢を強めるにもかかわらず、EUは危険な対中貿易依存を削減する政策手段を打ち出せないでいる。
軍事・安全保障に使用される重要技術に対する欧州の規制政策は弱い。大体は、関係国の裁量に任されることになる。半導体と半導体製造装置の対中輸出の規制強化が報道されているが、米国との交渉に入っているのは、EUではなくオランダだった。
欧州は、環境関連産品など戦略的分野の供給を確保し、可能な場合は国内に関係産業を持ちたい。しかし、電気自動車(EV)などは、中国、米国に大きく遅れを取っている。
フランスは、EUの新たな外国補助金規制に大きな期待をかける。7 月に発効する新たな規制により、EU委員会は国家補助を受ける中国などからの企業が欧州で生産し、あるいは公共調達に入札することを阻止できるようになる。問題は、それがどれほど使われ、機能するかである。
EUはこれまで、不正に安い輸入品に対し相殺関税や反ダンピング関税をかけるという貿易防衛手段(TDI)使用の権限を有してきた。しかしこの権限を十分に使ってきたとは言えない。10年前、EUは加盟国の反対を受け、中国から輸入される太陽電池(ソーラーセル)に対する高額かつ全面的な反補助金関税や反ダンピング関税の賦課を断念せざるを得なかった。その結果EU は中国企業にEUの太陽光市場を渡すことになった。
対中デカプリングをするか否かの二者択一よりも、デリスキング(リスク削減)の方が問題取組の枠組みとしてはより良いものだ。
EU本部と加盟国は、スローガンを華麗なレトリック以上のものにするために、正確に的を絞った手段を定め、それを使うように取り組む必要がある。
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EUのフォンデアライエン委員長は、1月17日のダボス演説で、「この転換期に我々は未だ中国と協力し、貿易をしていかねばならない。それ故我々はデカプリングよりも「デリスキング」に焦点を当てる必要がある。新たな外国補助金規制制度など全ての手段を使って不当な慣行に対処して行く」と述べた。
デリスキングとは、興味深い言葉だ。中国と大きな貿易投資関係を発展させてきた欧州がようやく、そのリスクに気付いていることは歓迎される。