2024年7月16日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年7月31日

 最近のオバマ・習会談で、中国は実質的な譲歩をしなかった。

 中露は「二重封じ込め」を打破し、西側有利に作られた国際金融秩序などを変えようと望んでいる。シリア、イラン、北朝鮮でも中露は米国に強制されたくない。

 ワシントンでは、中露に対して不満はあっても、貿易やドル保有ゆえに事態を混乱させたくないと多くの人が考えている。しかし、経済的相互依存は、紛争を止める上で、一定の効果しかないことを歴史は示している。第2次大戦前の日米、第1次大戦前の独仏などを見れば良い。経済利益は国家安全保障や国内政治の利益にすばやく従属させられる。

 中露同盟が出現したとして、その影響は、その永続性や米国等他国の圧力の度合いなどによろう。

 冷戦が終わってそう時間は経っていないので、米国も両極化した世界を想像できる。イランのケースで、米国またはイスラエルの攻撃の後、中露がイランに安全の保証を提供し、核インフラ再建を約束をした場合や、中国がフィリピンのゲリラを支援する場合を想像して欲しい。もし、米国と中露の関係が悪化すれば、そういう悪夢も排除し得ない。

 ロシア、それに中国は、軍事力を増強している。これは米国と中露との間の緊張を高める。

 中露同盟は不可避ではないが、西側はその危険をもっと認識すべきである。現実を踏まえた賢明な米外交は、他国の利害を現実的に評価し、対抗的連合が出てくる危険を減らすべきで、中露との協力をもっと考えるべきである。

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 ドミトリー・サイムスは、冷戦末期にソ連から米国に移住し、ソ連の内情に詳しい評論家として活躍した人です。


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