2024年11月25日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年7月31日

 この論説の現状認識については、基本的に賛成ですが、その現実が出てきた原因や政策提言の部分については必ずしも賛成できません。

 中露が将来、対西側で結託してくる可能性があるとの現状認識は正しいと思います。既に、中露は準同盟関係にあるとも考えられます。2001年、中露は善隣友好協力条約を結んでいます。その4条では、双方の領土一体性の相互支持、9条では、両国への脅威があった場合の協議などを定めています。最終条項25条で、この条約は20年間有効で、終了の1年前にどちらかが廃棄を通告しないと5年間自動延長されることになっています。江沢民とプーチンが結んだものです。この条約については、注意喚起が必要です。日本がロシアとの関係を良くして対中牽制をすることが出来るなどと考えるのは幻想です。ロシアは強大化する中国との関係について、対抗するか、協調するか考えた末、協調せざるを得ないと考えたのです。ロシアは、日本が対中カードになり得ると考えたことはないのではないでしょうか。ロシアは、中露国境問題を譲歩して決着させ、中国の力を中露国境から南に向けることを望んでいます。

 上記の論説で賛成し難い点は、中露共に、米国を政権転覆を企てている国と考え、欧米と中露の関係悪化は、米国の政策に原因があるとし、その是正が必要であるとしている点です。こういう前提で協力を考える場合には、こちら側として譲歩しないと協力関係は作れません。しかし、シリア、イラン、北朝鮮で譲歩の余地はあまりありませんし、人権問題でも、欧州MD(ミサイル防衛)問題でも、既定路線の変更は困難になってしまいます。

 漠然とした協力ではなく、個別問題での成果を目指した外交を展開していくのが正解であり、それしかないように思われます。

 なお、スターリンは、「相手の立場に身を置いて考えてはいけない。そういうことをしていると、とんでもない間違いを起こす。」と言っていました。

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