3月に尹大統領を日本が招待、5月の連休には岸田首相がソウルで大統領と会談。5月19日から広島で行われる主要7カ国首脳会議(G7サミット)に尹大統領が招待され、G7首脳とのアウトリーチ会合に出席する。
日韓首脳がわずか2カ月間で3回の相互訪問というかつてない親密な関係が実現する。
「日本は謝罪を行動で示しているのか?」
過去の日韓の宥和と軋轢の経緯をみると、韓国の主張が理不尽なのは百も承知として、日本の感情的な反応が先方の反発を招き、対立を激化させたことも否定できまい。
安倍政権時代の2017年1月、当時の駐韓大使と駐釜山総領事を一時帰国(召還)させた問題を例にとってみれば、慰安婦の少女像がソウルの日本大使館前などに据えられことが理由だった。
この時期、韓国では、ちょうど朴槿恵大統領の弾劾訴追問題が大詰めを迎えて政局が混乱の極みにあった。召還はやむを得なかったとしても、どさくさまぎれのようにも映り、韓国の強い反発を呼んだ。強硬手段をとるタイミングを慎重に選んでいれば異なる展開になっていたろう。
やはり安倍政権時代の19年7月、韓国を輸出手続き簡略化の対象国から除外した時の日本の対応も韓国側を刺激した。
先方にその決定を伝達、説明した際、経済産業省は、粗末な小部屋を会場とし「輸出管理に関する説明会」などという掲示を大仰にかかげて、それをメディアに公開した。韓国の聯合ニュースは「倉庫のような会議室であいさつもせず 輸出規制めぐる韓日初会合」(2019年7月12日、23年5月15日閲覧)と日本側の非礼をなじる記事を掲載した。
それにつけても、歴史的経緯をめぐる日韓の応酬で思い起こすのは、米国勤務中に、東アジア問題担当の国務省高官から問いかけられた言葉だ。
「日本は何度も謝罪しているが、言葉だけでなく行動で実行しているか」、「植民地支配からの開放を祝う8月15日の光復節に、日本大使が参列して首を垂れ、国立墓地で献花しているのか」――というのがそれだった。
ソウルの日本大使館によると、光復節にこれまで大使館関係者が出席したことはないという。
やはり私見だが、日本の閣僚クラス、たとえば外相が、同じ日に東京で行われる戦没者追悼式に出席した後、政府専用機でソウルに飛び、国立墓地で献花し、韓国政府首脳と会談するなどしても、損はあるまい。
韓国人慰霊碑で首相は何を語る
サミット終了後の岸田、尹両首脳による韓国人慰霊碑参拝で、岸田首相は何を語るか。
首相は5月7日、ソウルでの尹大統領との会談後の記者会見で、「歴史認識に関する歴代内閣の立場を引き継ぐ」と強調。「厳しい環境の下で多数の方が大変苦しい、悲しい思いをされたことに心が痛む」と遺憾の意を表明した。
「お詫び」「謝罪」という明確な言葉がなかったことに韓国内には不満が少なくないようだが、首相も慰霊碑では「お詫びする」と一言つけ加えてはどうか。
小渕首相、安倍首相はすでに、「お詫び」という表現を用いているのだから問題はないはずだが、国内保守派の抵抗を受けるのは必至だ。それは首相が強い指導力を発揮して抑え込めばいい。
前回の日本で開かれた伊勢志摩サミット終了後、米国のオバマ大統領が広島の平和公園を訪問、被爆者と抱擁を交わして日本国民の心を打った。
首相の慰霊碑参拝も日韓両国民の心をつかむか。それとも形式的な献花で終わるか。首相の決断次第だろう。