2024年12月22日(日)

WEDGE REPORT

2023年4月7日

 3月16日、尹錫悦大統領と岸田文雄首相による日韓首脳会談が行われた。文在寅政権下で5年間凍りついていた日韓関係が解氷期に転換されたとでもいうべき大きな一歩である。

 尹大統領は同盟国としての日本の重要性を強調しながら両国との協力と関係改善をアピールし、岸田首相も尹大統領の訪問を歓迎し、両首脳は日本の輸出厳格化措置の緩和、日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の正常化に合意するなど、悪化していた関係を回復したいという強い意志を示した。

冷え切った関係性の転換が期待される日韓首脳会談だったが、日本と韓国で評価は割れている(代表撮影/ロイター/アフロ)

 この会談に最も大きな影響を与えたのは韓国政府が大統領の訪日に先立ち3月6日に発表した「強制徴用判決に対する解決案」だ。ここでいう強制徴用判決とは2018年、韓国最高裁が戦時徴用工として動員された元徴用工に対する賠償を日本企業に命じた判決を指す。

 もし判決の通り韓国内にある日本企業の資産が処分され、元徴用工に配られたなら、日本側の反発を招くことは自明であり、日韓関係は破局を迎えることになるだろう。だからと言って、政府が最高裁の判決を無視すれば元徴用工や世論の激しい批判を受けることになるのもまた明らかだった。

 どちらに舵を切っても大きな反発は避けられないこの判決の執行は文在寅政権下では実施されることなく、尹政権にバトンが渡された。そして時限爆弾を渡された尹政権が苦心の末に下した結論は、韓国企業が財団を作って日本企業の代わりに元徴用工に賠償金を支給する「第3者返済」というものだった。

 賠償金を支給するものの、日本企業の資産を処分した金ではなく、韓国内企業の「寄付」によって集まった金で支給するという「妥協案」である。日本側は歓迎の意を示したが、韓国では反対意見の方が多かった。

 韓国の通信社ニュースピムが3月15日に発表した世論調査結果によると、この解決案に対する賛成意見は32.2%だったのに対し、反対意見は2倍に近い59.7%である。納得できない国民の方がずっと多かったのだ。このような状況での尹大統領の訪日とその成果に対する韓国内の評価は、最初から「限界」があるものだった。


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