3月6日付の英フィナンシャル・タイムズ紙は、「米国、日韓の徴用工対応を賞賛」との解説記事を掲げ、徴用工に関する韓国政府発表と貿易制限措置に関する日韓協議開始を報じている。要旨は以下の通り。
韓国と日本は戦時中の徴用工問題と最近の貿易制限措置を巡る緊張低減のための措置を発表し、米国は最重要同盟国の関係改善の画期的な動きと歓迎した。
3月6日、パク・チン(朴振)韓国外相は、1965年協定で賠償金を受けた韓国民間企業が徴用工犠牲者のため設立された公的財団に資金を払い込むと述べた。その数時間後、日本政府は2019年に韓国半導体企業に不可欠な化学物質に課された輸出制限措置軽減協議を開始すると発表。韓国側は、協議進行中は世界貿易機関(WTO)紛争解決手続を中断すると表明した。
日韓両国が緊張緩和に動いたのは、中国の拡張主義に対抗し北朝鮮を抑止するため和解を進めるよう米国が働きかけた結果だ。バイデンは、緊張緩和は韓日人民の未来に必須と賞賛した。
しかし、この提案に対して韓国では、日本企業に支払いを強制しないものだとして、犠牲者と野党から即座に反発が起こった。最大野党党首は屈辱的とし、政権が歴史的正義に反する道を選んだと批判。犠牲者の弁護士は、これは日本の完全な勝利だとした。
2018年に韓国最高裁が日本企業2社に徴用工犠牲者に賠償金を払うよう命じたことで日韓関係は崩壊。同年、従軍慰安婦犠牲者保証に関する別の枠組みも崩壊した。日本は朝鮮半島の植民地支配に関連するすべての賠償請求は1965年協定で解決されたと主張し、日本企業への賠償要求を拒否した。
林外相は、日本民間企業が財団に自主的に貢献することに政府は反対しない、岸田政権は1998年日韓共同声明で言及された植民地支配に対する「痛切な反省と心からのお詫び」を継承する、と述べた。
専門家によれば、双方の指導者交代で雪解けの見通しは明るくなっていた。尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は、日本は軍事侵略者から価値観を共有するパートナーに変わったと述べていた。
キヤノングローバル戦略研究所関係者によれば、このディール達成のスピードは両国が安全保障環境悪化に対する理解を共有しているからだ。しかし、専門家は、日本が1965年協定に関する重要な譲歩を拒否したことで韓国の選択肢は限られていたと言う。
ソウル大パク・チョンヒ教授は、徴用工問題の解決なしに二国間関係の前進は難しく、韓国政府は犠牲者に対し早く保証するという政治的決断をしたようだ、と述べた。
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日本の戦後処理に関するサンフランシスコ条約は朝鮮半島との「財産・請求権」問題は別途、2国間の特別取極で処理することを規定した。交渉の結果、1965年に日韓基本関係条約と日韓請求権条約が成立した。
請求権条約は、第一条で日本が経済協力として10年間で無償3億ドル、有償2億ドルを韓国に供与すると規定する一方、第二条で日韓両国とその国民の財産・請求権等に関する問題が「完全かつ最終的に解決された」ことになり、一方の国・国民の相手国・国民に対する全ての請求権で「同日以前に生じた理由に基づくもの」に関しては、「いかなる主張をすることもできない」と規定している。
これを見る限り、そもそも徴用工を含む全ての請求権の問題は処理済としか見えない。更に、交渉の記録は、韓国側は経済協力額算出の際に勘案すべき問題の一つとして徴用工未払い金問題を明確に認識していたことを示している。