2023年2月5日(日)

ディスインフォメーションの世紀

2022年12月9日

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桒原響子 (くわはら・きょうこ)

日本国際問題研究所研究員

1993年生まれ。大阪大学大学院国際公共政策研究科修士課程修了。外務省大臣官房戦略的対外発信拠点室外務事務官、未来工学研究所研究員などを経て、現職。京都大学レジリエンス実践ユニット特任助教などを兼務。2022〜2023年は、マクドナルド・ローリエ・インスティテュート客員研究員としてオタワで活動。近著に『なぜ日本の「正しさ」は世界に伝わらないのか 日中韓熾烈なイメージ戦』(ウェッジ)。

 このほどカナダは、長らく存在しなかった「インド太平洋戦略」を発表し、同地域における中国の国際秩序への挑戦を公然と拒否しこれに対抗するという外交・安全保障政策に大きな舵を切った。これまで対中関係悪化を避け中国に配慮するあまり、独自のインド太平洋戦略を持てないでいたトルドー政権であったが、この1年間で中国の脅威を強く意識した対中政策へと180度方向を転換させたのだ。これは、カナダから日本に向けたメッセージでもあり、日本外交にとって大きなチャンスだ。

カナダのトルドー首相(左)は中国の脅威を強く意識した外交戦略へと舵を切った(Adam Scotti/Prime Minister's Office/ロイター/アフロ)

「アジア太平洋」から「インド太平洋」へ

 2022年11月27日、カナダはインド太平洋地域におけるプレゼンスを向上させるためのインド太平洋戦略を発表した。これはカナダにとって初めての独自のインド太平洋ビジョンだ。

 日本をはじめ米国など、インド太平洋地域に対する明確なビジョンを持つ国や地域から見れば「遅ればせながら」の対応だ。19年4月の日加首脳会談で安倍晋三元首相が自由で開かれたインド太平洋というビジョンをトルドー首相に共有してから約3年半が経過していた。

 長年、トルドー首相率いる自由党は、中国を含む「アジア太平洋」を意識し、中国を含まず価値観を共有する同志国および友好国が共有する「インド太平洋」の概念を回避してきた。そのカナダがようやく中国への配慮を示す「アジア太平洋戦略」を脱却し、中国の脅威を意識した「インド太平洋戦略」に正式に移行したといえる。

 カナダでは中国系が人口の4.7%程度を占めており、場所によっては有権者のほとんどが中国系というところさえある。中国とのビジネス関係も深く、中国の市場はカナダの輸出業者にとっても大きな機会を提供している。カナダの内政や経済を形作る源泉となる存在である市民の多くが、中国との強い結びつきを有しているということになる。


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