朝鮮日報の3月16日付の社説が、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領訪日につき日韓経済協力の回復も緊急に必要だと述べている。主要点は次の通り。
尹錫悦は訪日前日の15日、読売新聞のインタビューに応じ、「韓国と日本がお互いの長所と短所を補完しながら相乗効果を起こせる分野が多くあると思う」と述べた。そして、半導体、宇宙科学技術、先端バイオを協力分野として挙げ、「韓国のデジタル分野の能力と、日本の精密素材、部品、機械分野での強みを合わせれば、両国は新たな市場への進出機会も多くなる」と述べた。
製造大国の両国は、過去50年以上にわたり極めて緊密な協力を維持してきた。韓国の主力産業である半導体は、日本の半導体素材、部品、装備なしには成長が出来ず、日本の産業は韓国の半導体を必要とする。韓国政府が15日に発表した世界最大の半導体集積地造成計画も日本の素材、部品、装備を必要とし、両国の石油製品、鉄鋼、化学分野は歯車のように相互に連結している。
韓国の輸出が増えれば日本からの輸入が増え、韓国の輸出が減れば日本からの輸入も減る。前政権の政策のために両国関係は悪化、日本に進出していた韓国企業の半分近くが撤収した。過去3、4年、両国はお互いの攻撃に明け暮れている。
米中の新冷戦の中で世界のサプライチェーンは再編されている。韓国と日本の間の経済協力を回復することも極めて重要だ。そのために尹錫悦は、大きな政治的リスクを取って、徴用問題の解決策を提案したのだ。来る両国の首脳会談は、これらのことを正常化するチャンスになる。
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日韓関係が大きく動いた。尹錫悦は6日、徴用工問題(日本側は「旧朝鮮半島出身労働者問題」と呼ぶ)につき韓国政府傘下の「日帝強制動員被害者支援財団」による第三者弁済解決案を正式に発表した後、16~17日訪日し、岸田首相と会談、その後に共同記者会見を行った。
16日の首脳会談開催前に掲載されたこの社説は、15日に行われた読売新聞とのインタビューで尹錫悦が韓国は半導体などで強みを持ち、日本は精密素材などで強みを持っており、両国がこれらを合わせれば大きな相乗効果がある旨を述べたことを紹介し、首脳会談は経済関係正常化のチャンスにもなると述べる。全くその通りである。
実際、17日には両国の経済指導者が参加した経団連と韓国全経連のビジネスラウンドテーブルが開催され、大統領も出席した。会合には、サムスン、SK、現代自動車、LG、ロッテなど韓国財閥のトップが出席した。今回の大統領訪日は、ビジネスにも良い影響を与えるものと期待される。尹錫悦も訪日直前から、徴用工など今回対日解決策につき国民の理解を得るために経済効果を強調する姿勢を強めていた。
尹錫悦の訪日は、単独の大統領訪日としては12年振りとなる。尹錫悦が今回重要対日懸案につき政権発足後1年以内という早い時期に解決策を打ち出したことは、今後の政治的タイムテーブルにおいて利益になるだろう。政権がレームダック化するまでの時間を確保したことになるからだ。