日韓関係は、重要な転換にひとまず成功した。モメンタム(推進力)と解決策が持続することが期待される。ここに来るためには数カ月にわたる両政府間の集中的協議があった。尹錫悦はブレなかった。対日徴用工解決策について、「全責任は自分にある」と退路を断っていた。
尹錫悦の今年3月1日の三一節(1919年3月1日の三一独立運動を記念する祝日)の演説は、これまでの大統領の冗長な演説に比べ短く、確固とした、かつ率直な内容だった。日本は今や韓国が協力していくべきパートナーに「変わった」、「私達が変化する世界史の流れを正しく読めず、未来を準備できなければ、過去の不幸が繰り返されることは自明だ」と述べた。勇気ある発言である。
3月21日の閣議では、野党などの批判を念頭に「日本はすでに数十回にわたり、私達に歴史問題について反省と謝罪を表明している」「韓国社会には排他的民族主義と反日を叫びながら政治的利益を取ろうとする勢力が厳然と存在する」と述べた。
これで、日韓関係のムードは基本的に好転し、尹錫悦は4月下旬に国賓で訪米、5月の広島サミットにアウトリーチ参加国として参加し、今年後半には岸田首相が訪韓する道筋が出来た。シャトル外交の復活は重要だ。
経済面での成果が鍵か
尹錫悦にとっても、日韓の困難なトゲを解決することで日韓関係を安定化し、もって日米韓三国協力を実現すること(それは韓国の対米関係に決定的に良い影響を与える)、北朝鮮や中国に対する立場を強化し、経済でも対日機会を最大限利用することなどが今後可能になってきたと言える。日本は、尹錫悦を引き続き可能な限り支援していくことが重要であろう。
今後、合意を着実に実施していかなければならない。特に労働者問題について、形骸化した2015年の慰安婦合意のようになってはならない。韓国の原告の一部や野党などは今回の第三者弁済案に反対している。またメディアなどは日本側の「直接的な」謝罪がなかったことを不満視しており、求償権の行使につきそれは想定されないとの日韓両政府の発言もくすぶっている。
他方、韓国にとっては半導体材料の対韓輸出規制解除への関心が強い。大統領訪日直前の日韓協議の結果を着実に実施することが重要である。韓国は世界貿易機関(WTO)提訴を取り下げ、日本は半導体材料3品の輸出を以前の状態に返すこととしたが、ホワイトリスト除外の取り扱いは今後の協議によるとしている。
また、安保については、日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を正常化し、具体的協力を進め、残る問題を解決していくことが必要である。そして日韓を新たなパラダイムの関係にしていく。そのためには日韓両首脳の信頼が揺らがないようにすることが重要だ。