首脳会談に対する両国の温度差
韓国大統領として首脳会談のために12年ぶりの訪日を決め、訪問直前には徴用工問題に対する「妥協案」を表明した尹大統領は、対日関係を再構築するために万全の態勢で臨んだと言って良いだろう。問題は関係改善を図る両首脳の意気投合が両国に同じ結果をもたらすことができなかったという点だ。
会談の直後の調査で岸田首相の支持率は上昇したが、尹大統領の支持率は下落するという、相反する結果となった。すなわち、「和解」に対して日本国民は評価と期待を、韓国国民は不信と反感を示したということだ。この結果について考察してみたい。
日本国内では過去5年間、韓国側が日本に示してきた強硬姿勢、対立と摩擦に対し疲弊し、いらだちすらも漂っていた。それだけに、「和解」への期待を持たせる今回の会談に対する評価は高かったのだろう。
これに対し、韓国国民の立場からは不満が残るものだった。「敏感な問題」には触れず先送りしたと映ったためだ。韓国人が考える「敏感な問題」とは慰安婦、徴用工に関する<過去史問題>、領土問題の<独島(竹島)問題>、水産物輸出入に関する<福島第一原発問題>などである。
しかし実のところ、韓国の歴代政権の中でこれらの問題を一度に、あるいは1つでもまともに解決できる政権などは存在しなかった。最初から解決できないとわかっている「難題」を盾に野党とマスコミが政府を批判したのだが、それが国民に効いたのだ。
野党は「外交惨事」「屈辱」「降服式」と批判
野党「共に民主党」の李在明(イ·ジェミョン)代表及び野党議員による韓日首脳会談の評価を紹介する。
李在明代表は「尹錫悦政権がついに日本の手下になる道を選んだ」、「日本に朝貢(政府が発表した徴用判決に対する解決案を指す)を捧げて和解を懇願する降伏式のようだ」と批判。野党議員たちは「屈辱」、「独島も捧げるのか」、「歴史否定」という感情的で過激な表現の横断幕を全国各地に設置して世論を刺激した。
感情的、過激な単語が登場するのは、往々にして冷静で説得力のある主張が難しいことの反証であるのだが、意外にも野党側の主張が韓国国民の心に響いてしまったようで、首脳会談後、尹大統領の支持率は下がり続けている。世論調査機関リアルメーターの調査によると、「強制徴用判決に対する解決案」発表前の3月2日には43.4%だった支持率が、会談直後の17日には37.6%、そして3月24日には35.7%と下落が止まらない。