2024年12月22日(日)

Wedge OPINION

2023年5月17日

 この変化はどうだろう。

 「戦後最悪」といわれたのはわずか1年前。いまは、「最も良好だった時代を超える」(尹錫悦大統領)というほどに日韓関係が改善した。

(opolja/rarrarorro/EM Concept/gettyimages)

 3月から5月にかけて両首脳が相互訪問、熱い歓迎を受けた。5月21日には、ともに広島平和記念公園にある韓国人原爆犠牲者慰霊碑で祈りを捧げる。

 今度こそ恩讐を超えた真の信頼関係を築くことができるのか。やはり一時的な現象に終わってしまうのか。未来永劫にわたる友好関係を望むなら、韓国側はもとより、日本側にも〝異次元の転換〟が必要だろう。

処理水の海洋放出でも態度変化

 岸田首相は5月15日の韓国紙「中央日報」のインタビューで、「尹大統領との信頼関係をもとに、両国の新時代を開いていく」と語った。そのうえで、1998年の「日韓パートナーシップ宣言」から4半世紀の節目であることを念頭に、何らかの新しい宣言を発出する意向を明らかにし、「協力を進展させ、適切な形で対外的に示していきたい」と述べた(中央日報電子版)。

 日韓和解を実現させた自賛と永続的な連帯への自信が伝わってくるようだ。

 これに先立って5月12日、ソウルで東京電力福島第一原子力発電所の処理水放出に関する外務省高官協議が開かれ、安全性を調査する韓国側視察団の日程、対象施設などについて意見交換された。日本メディアによると、韓国政府はこれまで公式に使用してきた「汚染水」「汚染処理水」の表現を「処理水」に変更する方向で検討している(産経新聞5月13日づけ)という。

 保守系紙「朝鮮日報」は14日電子版に、「恐怖ではなく科学を」という寄稿を掲載。韓国の放射線防御専門家はこのなかで、福島第一の処理水の総放射能が日本海に降る雨のそれを下回っていると指摘し、魚介類に影響を与えるという主張は「詐欺に近い」と論駁、放流に問題はないと強調した。

 こうした論調がなぜ、いまになって登場したのか不可解だが、目の敵にしてきた処理水に対する韓国の受け止めが変化したのは大きな驚きだ。

 5月7日、ソウルにおける日韓首脳会談で尹大統領が、「科学に基づく検証」を強調したことによる好ましい結果だろう。


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