たいして使えない? 次世代ケータイ
次世代高速無線の免許は、4陣営が手を挙げていましたが、電波を広く使えるようにするために、免許交付は2社に絞られました。しかし、2社だと寡占状態になるため、競争を活発化するために、免許事業者が異業種にMVNOで電波を貸し出すことを義務化しました。これは、既存事業者に画一的に免許を割り振っていた総務省のそれまでの電波行政から見れば画期的なことでした。
しかし、ウィルコムのつまづきでMVNOを免許事業者間まで拡大解釈せざるをえなくなった総務省は、そうとうアタマを痛めたようです。次世代高速無線の次に位置し、2010年から本格化するといわれる次世代携帯電話、いわゆる3.9世代のLTE方式携帯では、その免許方針が大きくダッチロールします。
「当初は免許は2社程度に絞るはずだったのだが」。総務省関係者は自嘲気味に語ります。LTEは、1月23日に免許交付方針が示されましたが(参考:総務省資料
限られた電波に多くの事業者が参入すれば、通信スピードは落ちてしまいます。LTEは技術的に、光ファイバーを超える最高150メガビットの伝送速度を出すことができますが、4社で分けたために、速度が落ち込むのは確実とみられています。実際には10分の1程度との見方が大勢です。こうなると、WiMAXや次世代PHSと比べても変わり映えのしない代物になってしまいます。
「4社仲良く免許をあたえる、という悪平等が、移動通信の高度化を妨げている」(同コンサルタント)。 この“4社免許”に、先の“免許事業者間MVNO”が組み合わさると事態はさらに悪化します。
そもそもLTEへの投資に熱心なのは、3G設備がそろそろ償却を終えるドコモだけとみられています。KDDIは過去に先延ばしにした800メガヘルツ帯の再編で手一杯。ソフトバンクは昨年11月の公開ヒアリングで、自ら、MVNOを含む地方でのローミングという、インフラを全て自前で持たない手法に言及したほど。ドコモ以外がどこまでインフラ投資に傾注するかは不透明です。
結局ドコモだけがLTE全国網を敷き、他社はやっても都市部だけで、あとはドコモから借りるとなれば、まさに光ファイバーと同じ状況が発生します。NTTが7割を超えるシェアを握る光ファイバーは、価格が高止まりして普及がなかなか進んでいません。
それでも、もともと参入障壁が高く、NTTの独占性が高いとされた固定電話は、移動通信よりも規制が強くかかっています。NTTは光ファイバーにかかっている原価を、決められたルールでかなり細かく開示しなければなりませんが、移動系は原価計算の手法さえ決まっていません。
このままだと、まともにLTEを整備するのは1社だけ、他の免許事業者はMVNOで電波を借りる。原価は明らかにしなくてよいから、サービス末端価格は高止まり、となるかもしれません。その上ムダに4社に分け与えたために、速度も遅いとなると、何が“次世代”だかわかりません。
本来なら2社に絞って免許を与え、インフラ投資義務を厳しく課し、免許を持たない事業者へのMVNOのみ促進すればよかったはずですが、そうできなかったのは、過去を否定できない行政のあり方に原因があるように思われます。
総務省も問題意識はあるようで、原価計算のあり方やローミングのあり方について、審議会での議論が始まりました(参考:総務省資料)。今後も注目し、続報していきます。
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