シリアが12年ぶりにアラブ連盟に復帰し、アサド大統領は5月19日に開かれたアラブ連盟の首脳会議に参加した。米ワシントン・ポスト紙コラムニストのロウギンは、5月25日付の論説‘Biden shouldn’t allow Arab leaders to rehabilitate Bashar al-Assad’で、アサドのアラブ連盟への復帰は、アラブ諸国がアサド大統領を支援するロシアを容認していることを意味し、アサド政権の復活を許すことは、ロシアのウクライナ侵攻を容認することであるとして、米国は、経済制裁を用いてアラブ諸国がシリアの復興のために資金援助しないようするべきであると論じている。要旨は次の通り。
ゼレンスキー・ウクライナ大統領がアラブ連盟の首脳会議で訴えた通り、アサド・シリア大統領が参加していることはアラブ連盟がウクライナの訴えに耳を傾けていない事を意味し、アラブの指導者達は、虐殺者アサド大統領とその同盟者であるプーチン・ロシア大統領を支持していることを意味している。
多くの人々は、ゼレンスキーをアラブ連盟の首脳会議に招待することは、アサドの復権から目を逸らすためだと皮肉に見ていたが、結果的にロシア・ウクライナ戦争に対するアラブ諸国の中立が偽りであることを暴露した。
例えば、サウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)は、ロシアの侵略を非難しないばかりか、両国はその経済力を用いて油価を引き上げて西側諸国による対ロシア制裁を弱体化させている。ロシアの戦争犯罪のパートナーであるアサド大統領を持ち上げることで、アラブ連盟はゼレンスキーの訴えを拒絶したのである。
バイデン政権は、米国はアサド政権との関係を正常化しないが、アラブ諸国が関係正常化することについては今後、反対しないと公式に述べている。これは、アサドに対して大量虐殺の責任を問うという米国の12年間にわたるコミットを放棄することであり、アサドを助けた人間を制裁するという2019年に採択された米国の法律「シーザー法」の実行の失敗も意味する。
現在、米国議会は米国政府に対して行動に出るよう圧力を掛けている。5月、米国下院外交関係委員会は、アサド政権と関係正常化に反対する法案を下院に送付した。バイデン政権のアラブ諸国がアサドの復権を容認する姿勢は、議会外でも元高官らの批判を招いている。
アサド政権に対する経済制裁はこれまでのところ効果がなかったという批判もあるが、それは、シーザー法が適切に運用されていなかったためである。(アラブ産油国からの復興支援の)資金援助に対して圧力を掛けることが、拷問を受けている何千人もの人々を解放し、虐殺を止める唯一の方法である。
アラブ連盟加盟国がアサドの戦争犯罪に目をつぶることは、プーチンの戦争犯罪にも目をつぶることである。アサドとその支持者を止めない限り、このようなシリアとウクライナの戦争被害は続くであろう。
* * *
ロウギンは、アサド政権のアラブ世界での復権は、ロシアのウクライナ侵攻を容認することに繋がり、米国は経済制裁でアラブ産油国がアサド政権の支配するシリアの復興を阻止するべきであると論じているが、その引き金を引いたのは米国の中東からの撤退である。