米ニューヨーク・タイムズ紙は、核開発についてサウジアラビアは米国と協議を続けているが、米国が核不拡散の見地からウラン濃縮などを禁じようとしているのをサウジ側が受け入れないので協議はまとまっておらず、しびれを切らしたサウジ側は中国に協力を求めようとしている、とする解説記事を掲載している。要旨は次の通り。
長年サウジは米国に対して核開発を支援するよう要求しているが、そのために必要な原子力協定締結の協議は、主にサウジ側が核兵器の開発を阻止するための条件を呑まないために遅延している。
協議が進まない事を不満に思うサウジ政府関係者は、中国、ロシア、さらに米国の同盟国を含む他の諸国との協力を追求すると同時に、米国が原子炉を建設するなどの見返りとしてイスラエルとの関係正常化を材料に米国に対して圧力を掛けている。
この新しいサウジの動きは、米国からの一層の自立と中国を含む他の勢力との関係を強化するというムハンマド・サウジ皇太子対外政策に合致するものでもある。
米政府関係者によれば、中国は、何十年にもわたってサウジに弾道ミサイルを提供し、軍人を派遣して弾道ミサイルプログラムを支援して来ており、サウジは自前で弾道ミサイルを製造可能だ。弾道ミサイル開発は、核開発とは別の問題であるが、しかし、どれだけ高度に技術的でセンシティブな分野で中国がサウジに協力しているのかを示している。
昨年12月に、習近平主席がサウジを訪問した際には、同主席とサルマン国王の間で原子力の平和利用について協力する声明を発出した。また、中国企業は、既にサウジのウラン鉱の探鉱と開発に協力することを提案している。過去3,4年の間に、中国はサウジで6~8箇所のウラン採鉱の可能性があるサイトの発見を支援したとされる。
* * *
イランの核開発問題は広く知られているが、サウジの核開発問題も核不拡散の見地から大問題である。
サウジは、核燃料を製造・輸出するためにウラン濃縮などの技術の移転を求めて不拡散措置の例外を求めているが、同国のムハンマド皇太子は、「イランが核武装するならば」との前提は付しているが、核武装を公言しており、そのような国に核兵器製造に繋がる技術を移転するのは非常に困難であろう。