問題は二つある。一つは、サウジのイスラエル承認と引き換えに例外を認めさせようという動きが米国とサウジの双方にあるようだが、政治目的を達成するために核不拡散レジームがないがしろにされるようなことはあってはならない。二つ目は、上記の記事が指摘しているが、米国に代わって中国が核兵器開発に繋がる技術を提供する可能性があるということである。
パキスタンとは違う点も
しかし、サウジに対して核武装に繋がる原子力協力を中国が行うかどうか、疑問がある。中国はパキスタンの核武装を支援したと言われているが、これは両国が国境紛争を抱えるインドに対抗するという戦略的な理由があったからだと思われる。
原油の安定供給などの経済的な理由で中国が核兵器の拡散に繋がるおそれのある原子力協力をサウジに対して行うだろうか。核兵器保有国が増加することは、核兵器保有国としての中国の影響力を希釈化することになる。
他方、中国が長年、サウジの弾道ミサイル計画を支援していることは注意が必要である。核爆弾だけでは戦略的価値は低く、弾道ミサイルの様な運搬手段が補完して戦略的な意味での核戦力が構築されるからである。
それゆえ、中国のサウジに対する弾道ミサイル技術の支援は、中東の戦略環境に大きな影響を与え得る。