肺がん治療で免疫治療薬が注目される中、今年4月下旬、「免疫薬併用 肺がん11人死亡」や「がん臨床試験中止 11人死亡」といったショッキングな見出しの新聞報道があった。新聞を読んで、その治療法に不安を感じた患者がいたに違いない。
しかし、新聞報道の中には国立がん研究センターが発表したプレスリリースを正しく読み取った内容とはいえない例もあった。質のよい医療記事には何が必要なのかを考えてみた。
「11人死亡」の見出しに不安
4月28~30日、2剤の免疫治療薬を併用した肺がんの臨床試験で11人が死亡し、臨床試験が中止になったという記事が一斉に報じられた。インターネットでは4月28日夜に同様の記事が配信された。どの新聞の見出しにも共通するのは「11人が死亡、臨床試験が中止」という言葉だった。
この一連の報道のあり方に関心を示したのは、医療・健康記事の質の向上を目指して、記事の検証活動を行っている「メディアドクター研究会」だ。6月3日、医師や記者、医療関係者、患者などが参加して、「プレスリリースと報道記事の読み比べ がん治療の副作用をどう報じるか」と題した勉強会(2007年から始まり、今回は第82回定例会・ウェブ会議)が行われた。約30人が参加した。
同研究会は記事の良否を判断する場合、「見出しが適切か」「煽っていないか」「科学的根拠を明記しているか」「利用可能な代替治療法を挙げているか」「効果や費用を定量的に報じているか」など10項目の評価指標を用いている。今回は、主に読売新聞、毎日新聞、共同通信の3つの記事を読み比べ、意見を交換する形で行われた。