2024年5月20日(月)

お花畑の農業論にモノ申す

2023年6月27日

 中山間地域の農業は、規模拡大や農地の集積が難しいため、効率の良い農業が難しい。「ただ、農業者がいなくなれば、畑には雑草が生い茂り、大切な水も守られず、地域が荒廃していき、更なる過疎化が進んでしまう。」と山下さんは強調する。

笑顔畑の山ちゃんファームでの地元の小学校の全校生徒による田植えの様子(山下さん提供)

 中山間地域の農業者は、農産物を生産するという経済的なものだけでなく、景観や水源を守るといった社会的な貢献も大きい。

 中山間地域の農業は、GDPでは測り切れない〝日本のため〟の仕事がなされている。

日本の食料自給を支えていないのか

 また、日本の農業の自給率は先進国で最低水準と言われる。確かに食料自給率はカロリーベースでは38%で最低位にある。ただ、これも見方を変えれば、また違った数字が見えてくる。

 古川原農園(横浜市)の代表を務める古川原琢さんは「食卓に香り豊かな感動を味わい深い歓びを」を経営理念とし、約1haで年間約50品目の有機野菜を栽培するだけでなく、ホップやバナナなど新たな品目に挑戦している。付加価値の高い作物を栽培し、農業だけの収入で生活できる経営モデル構築を目指してきた。

ケールを収穫する古川原琢さん(古川原さん提供)

 東京大学農学部で土壌改良を専攻し、大手合繊メーカーを経て、2013年に就農している。農業は家業ではなかったものの、独立志向が強く、幼い頃から農業に興味があった。大手合繊メーカーで仕事をしながら1年間、神奈川県の農業者研修支援施設(神奈川県立かながわ農業アカデミー(農業大学校))に通い、技術と経営について学んだ。

 「自分の生活、命を繋ぐため、厳しい自然に翻弄されながらも、必死に闘い、そこで収穫物、収入を何とか得ている。22年度の売上は1000万円を超え、全国的には小規模とは言え、会社勤めのころに負けない所得を確保できるようなった」と胸を張る。

収穫終了後1時間で都心の店舗の店頭にも並ぶ古川原さんの野菜(古川原さん提供)

 こうした確かな農業収入を得ている古川原さんであっても、38%とされる食料自給率への寄与は低いだろう。なぜなら、それはカロリーベースでの換算で、古川原さんが作る有機野菜やホップ、バナナは高いカロリーを算出しないからだ。


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