同社は19年度に国のスマート農業実証プロジェクトに採択され、ロボットトラクター・コンバイン、ドローンなど新しい技術を活用している。農業現場にスマート農機など革新技術が導入され、若い世代にも肉体労働が中心とのイメージが変わりつつあり、むしろ楽しい職場とも感じる部分があるようだ。
農業は3Kなのか
日本では農業を3K(きつい、汚い、危険)などと流布されることもあり、体力勝負で頭をあまり使わない職業などと誤解され、見下す傾向があった。それが若い人たちの間で農業に対してマイナスの印象を与え、後継者不足の要因の一つにもなっていると思う。
しかし、古川原さん、山下さんの事例で見たように、生産者は自然の猛威や農産物価格低迷のなかで工夫しながら日々、奮闘している。大学で土壌肥料などを専攻していたことも2人に共通している。
農業経営には化学、生物、経営、マーケティングなど総合科学の知識が必要で、最近の異常気象や不安定な国際情勢の影響を受け、高度な経営判断が常に求められる。農業は肉体労働とのイメージが強いが実際はかなり異なる。実は今の農業は総合科学が必要で、体力と同時に、考えることが重要で、かなり高度なスキルを求められる難しい職業である。
福井県鯖江市の事例に見るように、若い方々がスマート農業など革新技術を機に農業に参入してきている。スマート農業が普及し、農業経営のあり方も大きく変わってきている。国民が3つの事例のような生産者の真の姿を見て、彼らに敬意を払えば、農業の価値も上がる。
インバウンドの旅行者の主目的の一つが日本の食と自然を堪能することと言われている。日本全体の価値を高めるためにも農業はますます日本にとって重要な分野になっていくだろう。
このように、海外の方々から高く評価されている美しい田園地帯を維持し、世界で人気の高い日本食を支えているのが日本の農業だ。「恥ずかしい」どころか「誇らしい」職業と、国民が正しく評価していくべきと思う。農業が正当に評価されることが今後、農業の若い後継者を増やし、将来にわたり、日本の農業を持続的に発展させていくに違いない。