2024年4月15日(月)

インドから見た世界のリアル

2023年6月27日

印中国境にも米国の関与

 それだけではないのである。実は今回の米印合意には、印中国境における軍事協力について交渉を開始することも、書かれているのである。これは、安全保障補給協定(Security of Supply arrangement)と、国防調達円滑化協定(Reciprocal Defense Procurement agreement)と呼ばれるもので、要するに、戦争などの緊急事態において、米国の武器をインドに提供するための協定である。

 これが印中国境を念頭に置いた協定といえるのは、先例があるからである。印中国境では、2020年に印中両軍が衝突して、インド側だけで死者20人、負傷者76人、合計96人もの死傷者がでて以来、中国軍がハイテク兵器を次々配備して、緊張状態が続いている。

 中国は、極超音速ミサイル、ステルス戦闘機、最新型の地対空ミサイル(S-400)、巡航ミサイル搭載爆撃機などを、他の地域から印中国境に再配置している。戦車などの陸上兵力も多くきており、21年2月に撤退した中国側の侵入地域には、中国の戦車だけで200両もいた。印中国境は、標高が3000~1万メートルもある、富士山の山頂より高い地域であるから、重量のある戦車が200両も配備されるのは異様である。

 この時、インドは緊急予算を承認し、各国から必要な装備品を買いそろえたのである。そして、それに応じたのが米国だった。

 米国は、この地域が冬場マイナス30度になるため、極寒用の戦闘服などを何万着もインドに供給した。またインドが購入契約していた装備品、ウクライナに供与されたことでも知られるM777超軽量砲と、命中率の高い誘導砲弾、高高度でも飛べる戦闘ヘリコプターや輸送ヘリコプターなどを、急ぎ納入したのである。

 今回、米印間が協議している協定は、こういった事態において、米国がインドに対して、武器の提供をし易くする協定だ。

 2020年から緊張状態が続く中、昨年夏、米印は印中国境から200キロメートルのところで、昨年冬には100キロメートルのところで、共同演習を実施した。今年4月には、第二次世界大戦のとき、中国全土を爆撃する拠点になった軍基地に、米軍のB-1爆撃機を派遣し、米印共同演習を実施した(その演習には日本もオブザーバーを派遣し、日米印共同演習となった)。

 米国は、印中国境における関与を強めている。これは、これまでにない、動きなのである。

 印中国境におけるインド軍の防衛力が向上すれば、中国は、他の地域から、部隊や武器を、印中国境に移動させるかもしれない。台湾や日本に対して使われるはずだった武器が、印中国境に移動していくことになる。

 だから、印中国境の情勢は、東シナ海の情勢、日本の安全保障とつながる部分でもある。そういった動きが、米印間で起きている以上、それは、日本にとっても注目の情勢といえよう。

   
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