2024年12月3日(火)

インドから見た世界のリアル

2023年6月27日

 6月22~25日までインドのモディ首相が訪米し、米国のバイデン大統領との間でさまざまなことに合意した。特に注目されるのは安全保障面だ。今回の合意には、米印関係が次の段階に入ったことを示す、多くの合意が含まれている。大きく3つに分けて解説したい。

(ロイター/アフロ)

なぜエンジンの共同生産が重要なのか

 まず、注目されるのは、米国製の戦闘機用のエンジンの技術をインドに提供して、米印共同で生産することにしたことだ。これは、インドとロシアだけでなく、グローバルサウスにおける印中の競争に影響を与える可能性がある。

 インドが保有する武器の約半分はロシア製だ。特に、ロシア製は、戦闘機や戦車といった戦闘の正面に立つ武器(正面装備とよばれる)に多い。

 武器は高度で精密な機械なのに、乱暴な使われ方をする。だからすぐ壊れる。パソコンをたたきながら使うようなものだ。

 そのため、修理部品が必要になる。正面装備は弾薬も必要だ。だから、インドが保有する武器の中でロシア製が多いということは、インドがロシアからの修理部品や弾薬の補給に依存していることを示している。

 しかもインドの場合、戦闘機や戦車の約半分が修理中である。もし、インドが今すぐに中国やパキスタンと大規模な戦争になるなら、急ぎ、ロシアから修理部品と弾薬を送ってもらわないと戦えない。その点で、インドの安全保障をロシアは握っているのである。

 しかし、インドは、そのようなロシア依存の弊害を感じてきた。2度の事件があったからだ。

 1回目は、ソ連が崩壊した時。インドは修理部品と弾薬の供給を断たれてしまい、旧ソ連の軍需工場跡地に軍人たちを派遣して、探し回らせる羽目になった。そして、2回目は、ロシアがウクライナに侵攻を開始した時である。つまり今だ。

 ロシアは、自ら多くの武器・弾薬を消費してしまった。中国から武器製造の部品を輸入したり、北朝鮮やイランにまで弾薬の供給を依頼している。インドに輸出した分も、払い戻させているようだ。だから、ロシアからインドへ輸出する分はない。このままでは、インドが保有するロシア製の武器は、いずれ動かなくなってしまうのである。


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