2024年5月16日(木)

Wedge REPORT

2023年6月30日

 最多密度曲線と平行して引かれている青い直線は等収量比数曲線で、最多密度曲線に対しての割合(収量比数:Ry)が0.05間隔で引かれている。

 植栽本数3000本/haで自然枯死線をたどると、樹高20mの時は密度2050本/ha、材積700㎥/ha、Ry0.95となる。これを間伐してRy0.8まで下げるには、まず20mの樹高曲線とRy0.8の交点を読み取る。材積590㎥/ha、密度1350本/haだから、本数間伐率は(2050-1350)/2050=34.1%、間伐材積は700-590=110㎥となる。

 実際は、現地調査から求めた平均樹高と本数密度を林分密度管理図に落としてRyを求め、間伐の目安としている。密植(木の間隔を開けずに植える)の吉野林業では0.9になると0.8まで下げ、疎植(間隔を開けて植える)の飫肥(おび)林業では0.6になると0.5まで下げるように密度管理されていた。

 このように林分密度管理図を利用して間伐の設計をすることができる。

長期成長データに見る間伐の効果

 次に実際の間伐についてのデータを見てみよう。これほど間伐々々と騒がれる割には、長期的視点で行われている試験研究は少ない。そんな中で「添畑沢(そえはたざわ)スギ間伐試験地における 45 年生から 104 年生までの長期成長データ」(「森林総合研究所研究報告」(Bulletin of FFPRI) Vol.14 No.1 (No.434) 65 - 72 March 2015)という興味深い研究報告である。

 添畑沢スギ間伐試験地は 1953年 (45年生時) に秋田県能代市の丘陵地のスギ人工林 (1909 年植栽) に設定された。53年は筆者の生まれ年である。何と70年間維持されモニタリングされてきたものであり、全国的に見ても貴重な試験地である。

 このような試験地が各地にもっとたくさん設定されていたはずなのだが、その多くは国有林経営が破綻に至る過程で解除され伐採されてしまった。長期的な視点に立った試験研究より、目先の収入を優先する視野の狭い行政と技術の軽視が、今日の林業の危機的な状態を招きまた解決策を見いだせない原因の1つである。

 この試験地には、強度間伐(間伐率24~47%)2区、中庸度間伐(同22~30%)2区、弱度間伐(12~23%)2区、無間伐(対照区)2区の計8つのプロット( 各 40 m × 50 m) が設けられた。

 間伐は、49 年生、61年生、73年生のときに3回行われた。84年生時は台風被害による枯損である。

 その結果を、ここでは立木材積の変化(図2)に着目して見ると、104年生では無間伐から間伐強度の弱い順に高くなっている。

 このような高齢な林分では、間伐強度の弱い方が立木材積が多くなり、無間伐が最多となる。筆者の経験では、立木を購入する伐採業者の多くが無間伐林は本数・材積が多いと言っていたが、それと符合する。

 ちなみに104年生時の平均直径は、強度間伐区と中庸度間伐区では約65cm、弱度間伐区では約55cm、無間伐区では約50cm であり、間伐強度の弱い方が細いが、年輪は緻密であるといえる。


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