しっかり伝えられているのか
不安解消には、相手に「伝わる」まで粘り強く発信を続けていくしかない。外国に住んだことのある日本人ならわかると思うが、「伝えた」けど相手に「伝わっていない」経験は多くある。
北京の在中国日本大使館の中国語版HPでは、処理水について発信しているものの、トップページ中段の「大使馆通知(大使館からのお知らせ)」内の「其他通知(その他)」にある。在香港日本国総領事館は、動画をつけたり、香港における各種論調や意見にも反論したりしているが、筆者の友人からは「あ、実情はそうなの? 知らなかった」と、伝わっていない状況が聞こえてくる。
前述の日本から香港の食材を送っている香港人は「日本政府の発信が足りないと思います。個人や企業の発信では限界がありますから、もっと大々的に告知活動と情報提供をしてほしいです」。この方は、日本全国を歩き回り、各地の漁業・農業関係者、食品会社の人などにたくさんのコネクションを持つ。おいしいと思える食材を見つけたら、どんどん香港に輸出している。日本の食のシステムを理解しているだけに現状について歯がゆさを感じているようだった。
もう総力戦しかない
一般の香港人の福島第一原発処理水に対する感情は心配とそうでもないのどちらにも揺れ動いている状態と言えよう。これが「禁輸」という方向に傾いてしまえば、香港人の生活は変化を余儀なくされるし、輸出国の日本への経済的ダメージは大きいだろう。
日本として何をすべきか。結局、相手は人間だ。最後は、相手がこちらに扉を開けてくれるのか? ということになる。
まして相手が外国であるなら、HPなどで発信するだけではなく、関係者が地元テレビに出演したり、メディアのインタビューを受けたり、香港では頻繁に行われる日本関係のプロモーション活動に参加したりと、控えめな日本人の性格を考慮すると、やりすぎというぐらい発信しないと伝わらない。IAEAの報告書に対し、日本政府側は「各国へ丁寧に説明していく」といったコメントをしているが、それだけでは不十分で、ネガティブな要素は、丁寧かつ積極的に説明していかないと伝わらないだろう。
香港は基本は親日都市なので、市民に対してしっかり対応することで彼らを味方となる世論形成をしたいところだ。官民一体という言葉があるが、総力戦で道を開くしかない。