今春から、東京電力福島第一原子力発電所では汚染水を無害化処理したALPS処理水(以下処理水)の海洋放出が本格化する。そうした中で、国際環境NGOを称するグリーンピースが2月22日に『今さら聞けない「汚染水」のホントとウソ、まとめました』と称する記事を出した。
しかし、この記事には重大な事実誤認が多々含まれる。以下に大きく6点、問題を具体的に指摘していこう。
1.量の概念無き不安煽動
「あらゆるものは毒であり、毒なきものなど存在しない。 あるものを無毒とするのは、その服用量のみによってなのだ」
16世紀に活躍した「医化学の祖」と呼ばれる医師パラケルススの名言は、リスク考慮に不可欠の「量の概念」を説く。あらゆる「毒」は量によって決まるものであり、それは当然放射線や放射性物質にも当てはまる。
ところが、グリーンピースの主張には一貫して「量の概念」が欠けている。たとえば、グリーンピースは記事で『汚染水から多核種除去設備 (ALPS)で放射性物質を分離させた水を、電力会社や政府は「処理水」と呼んでいます。この「処理水」の中には、ALPSで除去できないトリチウムや炭素14が残されています』と書く。
しかし処理水に含まれる炭素14の濃度は、放射性廃棄物の国際的基準に沿う形で導入されている国の規制基準を満たしている。
具体的には2020年6月末までに分析を実施したタンク計80基における炭素14の濃度は、国の規制基準(告示濃度限度)2000ベクレル/リットルに対して、平均で42.4ベクレル/リットル(最小2.53ベクレル/リットル、最大215ベクレル/リットル)である。仮にその水を成人が毎日約2リットル、1年間にわたり飲み続けた場合でも年間0.021ミリシーベルト(mSV)程度であり、リスクを考慮するに全く値しない。
むしろ、その量の海水を飲めば塩分など他の要素によって健康影響が発生する。まさに「量の概念」が決定的に不足した主張と言えるだろう。