2024年4月20日(土)

Wedge REPORT

2023年3月8日

4.非科学的な主張

 グリーンピースの主張には非科学的な要素も多々含まれる。

 『いったん放出された放射性物質は二度と回収されることなく、海流にのって世界中の海に散らばっていきます。そうした放射性物質は海水の中で薄まっていくだけでなく、他の化学物質と同じように、海の食物連鎖のなかで起こる生体濃縮によって濃度を高めていく可能性もあります。*政府は「トリチウムは生体濃縮されない」としている』と主張するが、既に述べたように「ALPS処理水に大量の放射性物質が含まれている」かのような主張は事実に反する。

 また、トリチウムが生体濃縮しないのは単なる科学的事実に過ぎず、政府が決めたことではない。仮に生体濃縮が出来るなら他の物質同様にALPSでの除去も容易だろう。「生体濃縮によって濃度を高めていく可能性」など無いにもかかわらず、科学的根拠無き不安を煽っている。

5.当事者と専門家の軽視

 当然ながら、こうしたグリーンピースの言動には当事者を中心に非難が殺到している。グリーンピースは、2022年6月にも『汚染水が海に放出されたら、世界中の海に被害が拡散されてしまう。そうなれば、福島県民が「加害者」になってしまうんです』などと発信して炎上した。

 しかし、彼らがこれまで当事者の声に耳を傾け謝罪したり、記事を訂正するなどの動きは一切見られなかった。先に述べた風評拡大に無頓着な「汚染」呼ばわりも含め、彼らは当事者をあまりにも軽視しているのではないか。

 そもそもタンクが立地する自治体の代表である大熊町と双葉町の首長は、地上での継続保管に反対している。林立するタンクは廃炉作業や被災地復興にとって大きな障害となっている。さらに、あくまでも一時保管を目的に設計されているタンクは一般建築物に比べて耐震性も不十分で、災害や老朽化で不完全処理の貯蔵水が漏れるリスクもある。対して、ALPS処理水には科学的な海洋汚染リスクなど無くIAEAのグロッシ事務局長もこの方針を歓迎している

 この期に及んで不都合な当事者の声や専門家を無視し、非科学的な主張を並べ、平然と「地元で継続保管しろ」「土地はまだあるはずだ」などと主張する独善は被災地を踏み躙る行為ではないのか。

 グリーンピースは『決定の過程があまりに拙速で非民主的で、科学的な検証も不十分でリスクが高く、海洋放出以外の処理方法も十分に検討されたとはいえません。』とも主張するが、これも事実や当事者を無視した主観に過ぎない。

 処理水の処分方法は専門家による「トリチウム水タスクフォース」及び「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」で長年科学的検証も踏まえ検討された結果、改めて「諸外国と同様の海洋放出が最も安全かつ妥当」との結論に達している。さらに意見交換会や現地での説明会、公聴会も繰り返されてきた。その回数は2021年4月の基本方針決定まで数百回にも及び、漁業関係者など現地の利害関係者も参加してきた。


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