6.実害をもたらしかねない
東電原発事故では、住民が健康被害を起こす量の被曝をしたケースは見られていない。国連科学委員会(UNSCEAR)も、「健康影響について、今後検出可能なレベルで増加することは予想されない」とした上で、「心理的・精神的な影響が最も重要だと考えられる」と結論付けている。
ただし、この「心理的・精神的な影響」こそが深刻なリスクとなる。たとえば2006年に世界保健機関(WHO)から出された報告書では、1986年に起こったチョルノービリでの原発事故における健康被害の総括として、「メンタルヘルスへの衝撃は、チョルノービリ原発事故で引き起こされた、最も大きな地域保健の問題である」と結論付けた。
福島と違い住民に特異な被曝があったチョルノービリでさえ、強い不安や恐怖こそが被曝以上に健康への脅威をもたらしたというのだ。その他の異なる研究でも、「高い健康不安」が心疾患発症や死亡率を上げることが指摘されている。
グリーンピースが科学的事実ばかりか当事者さえ無視して繰り返してきた執拗な「汚染」呼ばわり、社会不安や恐怖の煽動は、全く正当化できない「加害」そのものだ。
以上6つの理由からグリーンピースによる海洋放出反対運動に対し、被災地に出自を持ち、今も福島に暮らし続ける一人の県民として最大限の非難と抗議の意を表する。