このイニシアティブは、昨年5月に東京で開催されたクアッド首脳会合で合意されたものである。これは、ルールに基づく海洋秩序に対する挑戦に対抗するために、違法漁業、瀬取り、密輸など、違法な活動を継続的にモニターし、モニターの結果得られたデータを関心を有するインド太平洋のパートナー諸国と共有し、これら諸国自らの能力の足らざるところを補い、もってこれら諸国が「威圧的、挑発的又は一方的な行動」に対処することを支援しようとするものである。
反中国色が強過ぎるとIPMDAのパートナーを募ることに支障を生ずるので、明示的な言及は避けているが、中国の漁船、中国の偽装された漁船(いわゆる海上民兵)、中国海警の船舶の行動を含む中国の不透明な海洋活動がIPMDAの焦点であることに疑いはない。
併せて能力向上支援も行うべき
今年5月の広島におけるクアッド首脳会合の共同声明には、IPMDAがその試験段階を開始していること、IPMDAが東南アジア・太平洋地域の海事機関にほぼリアルタイムで海洋データを提供しており、数カ月後には、インド洋地域のパートナーにもその対象を拡大することが記述されている。
上記の記事では、IPMDAの活動の輪郭が説明されている。クアッドの政府当局者がIPMDAの活動に参加するパートナー諸国を明らかにしないのは、これら諸国が中国との関係に神経質であることに配慮してのことであるが、IPMDAの活動が着実に進展しつつある様子であることは歓迎すべきことである。
それは、「自由で開かれた」インド太平洋であり続けることを確保するための重要な努力であり、クアッドの活動の裾野を広げることにもなる。もとより、これだけでは不足であり、並行して、沿岸警備艇の供与など、これら諸国の能力向上のための支援が欠かせない。日本は、海上保安庁や日本国際協力機構(JICA)を通して、積極的に、今までも、アジア、アフリカ、大洋州諸国などの海上法執行機関の能力向上支援に協力をしてきた。今後も引き続き進めることが必要なことは指摘するまでもない。