21世紀の今日、55年体制の老残を見せられるとは思わなかった。
林芳正外相が国会の予算審議優先を理由に主要20か国・地域(G20)外相会議を欠席した。国会審議はもちろん重要だが、ロシアのウクライナ侵略が討議されるG20も、それに劣らず貴重な機会だ。代理が出席するといはいっても、外相の姿がないとなれば、事実上、日本を置き去りにしたままで議論が進行してしまうだろう。
一部野党が慣例を盾に外相の国会出席に固執、自民党は予算、今後の法案審議への影響を恐れて唯々諾々と要求を呑んだとすれば、両者とも国益を損なった〝正犯〟としてきびしく責任を問われよう。
G20終了翌日に同じニューデリーで開かれる日米豪印4カ国「クアッド」外相会議の欠席も取りざたされたが、外相の国会出席要求を見送ることで与野党が合意、インド行きが可能となった。日本がいわば提唱国であるクアッドにも欠席していれば、日本外交は、いよいよもって機能不全に陥るところだったが、土壇場で回避された。
外相が出席を見送ったG20外相会議は3月1~2日、ニューデリーで開催。ウクライナ問題、中国が跳梁(ちょうりょう)する東、南シナ海情勢、食料・エネルギー安全保障などが議題にのぼった。
中国やロシアに加え、インドネシア、南アフリカなど米欧と距離を置く各国が出席、忌憚なく議論を展開する。参加国の個別会談も活発に行われ、今年の主要7カ国(G7)議長国である日本は、この場での意見交換の結果を、政策協調の場である5月のG7首脳会議に反映させたいところだった。
ホスト国インドも「驚き、混乱」
ウクライナ支援をめぐって日本は、ロシアの侵略直後こそ、ヘルメット、防弾チョッキなど実質的な装備品を供与、ロシア大使館の外交官8人を一挙に追放するなど、G7各国と足並みをそろえる健闘ぶりをみせた。
しかし、その後は予算不足もあって息切れ。米国、ドイツなど各国が最新鋭戦車など大型兵器の供与に踏み切ったのに対し、あらたな資金供与こそ55億ドル(7400億円)と多額にのぼったものの、そのほかはロシアの民間軍事会社ワグネルの禁輸団体指定、ドローン関連物品の禁輸などの追加制裁にとどまっている。