過去にもたびたび国会優先で欠席
首相、閣僚が国会審議に縛られて重要な国際会議への欠席を余儀なくされたケースは過去にも時折みられた。
22年2月、インドネシアで開かれたG20財務相・中央銀行総裁会議に鈴木俊一財務相がやはり国会審議を優先させて欠席、神田真人財務官が代理出席。立憲民主党の野田佳彦元首相は「なぜ政治家が出席しないのか」と批判した。
18年春、アルゼンチンでのG20財務相・中央銀行総裁会議は、麻生太郎副総理兼財務相が、森友問題の国会審議のため欠席した。この会議は仮想通貨の規制を協議する重要な場だった。
空虚に響く首相の施政方針演説
岸田首相は今国会冒頭の施政方針演説で、G7議長、国連安全保障理事会の非常任理事国を念頭に、「その立場を活かし、世界の平和と繁栄に向けた取組を主導します」と国民に訴えかけた。
その力強い言葉がこれほど空虚に響くことがほかにあろうか。政局運営に目を奪われて重要国際会議欠席も厭わない政権にどうして「世界の平和と繁栄に向けた主導的役割」など期待できようか。
林外相のG20出席見送りが報じられた3月1日の各紙紙面は、「出生数80万人割れ」という深刻なニュースを大きく報じていた。少子・高齢化にとどまらず、日本はいま、さまざまな分野で一流国の地位を失いかねない瀬戸際にたたされている。
失われた30年に象徴される長引く経済低迷、政府開発援助(ODA)予算の大幅減少、軍事力を前面に出すことができない国際貢献、女性議員の数の少なさ、LGBTなどをめぐる乏しい人権意識……。今回のケースによって、二流国転落をもたらすいくつかの原因のリストに、「永田町政治の老残」というあらたな項目が付け加えられてしまったようだ。