2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2023年3月2日

 ゼレンスキー大統領との会談にしても、各国首脳が相次いでキーウを訪れ、対面で行っているのに対し、G7議長の岸田首相だけがウクライナへ未訪問となっている。ウクライナ支援が各国に比べ見劣りするなかでのG20欠席は、日本の存在感を大きく損ない、真剣さも問われる事態にもなりかねない。

 すでにG20議長国、インドのメディアは「日本の信じがたい決定は、ホスト国インドを驚かせ、混乱させている」(ヒンドスタン・タイムズ)と報じ、大きな失望感を伝えた。

欠席と引き換えに予算早期成立狙ったか

 外相欠席については自民党内からも疑問視する声が出ている。

 細野豪志衆院議員は「G7議長国として、主要途上国に〝法の支配〟の重要性を訴える機会を逸する残念な判断」とツイート。野党からも同様の声があがる。

 国民民主党の玉木雄一郎代表は「こういう時のために副大臣、政務官制度を作ったはずだ」として、外務省の政務三役に国会答弁を任せるべきとの考えを示した。日本維新の会の音喜多駿参院議員は3月2日の参院予算委員会で、前日の林外相の答弁がわずか1回、56秒だったことに触れ、「林大臣の〝無駄使い〟だ」と指摘した。その通りだろう。

 林外相のG20出席について外務省は、1月中旬から各党に根回しを始めたが、立憲民主党があくまで国会審議の優先を求め、合意に至らなかったという(時事通信)。同党の泉健太代表は、「日程の責任は自民党にある」と語り、同党の岡田克也幹事長も「日本の外交力で日程を動かすことができたはず」と傲慢と受け取られかねない認識を示している。

 情けないのは自民党だ。

 藤川政人参院予算委員会筆頭理事は早い段階から、「外交は重要だが国会を優先してもらう」と強調し、世耕弘成参院幹事長も「日本が置かれている状況を踏まえれば、外相から直接聞いてみたい議員も多い」と語り、出席見送りやむなしとの認識を示していた。

 こうした発言からは、慣例を盾に、あくまで全閣僚出席を答弁席に縛り付けておきたい立憲民主党、予算の早期成立のために重要な国際会議を犠牲にして恥じない自民党――という構図が浮かび上がってくる。

 2023年度予算案は、2月28日に衆院を通過、年度内成立の運びとなったが、外相を国内にとどめるのと引き換えに、予算案の順調な審議に協力してもらうという〝暗黙の密約〟があったのではないかという疑念すら呼んでいる。


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